鉄道が土地の文化・風土を支えている
このような「現場主義」はお笑い以外の場面でも役に立つと立川さんは力説する。
「セミナーのお仕事でもご当地の鉄道ものまねを披露すると笑ってもらえますが、前乗りしての現場での研究あってこそだと実例をもってお見せするわけですね。お笑いに限らず、どんな業種でも役立つ心構えではないでしょうか」
ものまねライブでは、進行表どおりに終わることもほとんどないという。
「時間どおりにいかないことこそがライブの強みかなとも思います。考えておいたネタは押さえつつ、お客さんとのアドリブを楽しむ。鉄道でいえば臨時列車や増発がバンバンあるのが私のライブです」
日本各地の鉄道の現場を見てきただけに、鉄道の現在についても何かしらの貢献をしたい気持ちを持ってきた。
「時代が変わっても駅があって列車があるのは変わらない。公共財で身近なものです。街ごとの特色ある文化や雰囲気も鉄道があってこそだなと思うんですが、地方に行きますとやはり鉄道が衰えて街がさびれてしまう事例が起きています。これを見るとやはり何とかしたいなという気持ちがあります」
鉄道会社の公式イベントの出演も続いているが、駅の実際の案内放送を仕事として担当したい、という夢がある。
「ギャラも要りませんので、ものまねではなく本物のナレーターとしてお仕事をいただける日が来るといいですね(笑)。何十年も“音”にインスパイアされてきましたが、少年時代、日豊本線の沿線で警笛のものまねをしたら機関士さんが手を振ってくれた、あれが私の原点です。
だから子どもたちの前でも真剣にものまねをすると、彼らも好きになってまねしてくれます。それと、音ももちろんですが鉄道の醍醐味はやはり景色だと思うので、新幹線の窓を昔のように広くしてもらえたらなと思いますね」
乗りもの音まねのパイオニアとして活躍し35年。「好き」を究める立川さんのバイタリティは尽きない。
(取材・文/大宮高史)
《PROFILE》
立川真司(たちかわ・しんじ) 1959年12月生まれ。大分県出身、埼玉県所沢市在住。小野田セメントでのサラリーマン経験の後、独立しものまね界へ。テレビ・ラジオ・イベントなどでの鉄道・飛行機ものまね芸歴35年。ものまねショーレストラン『そっくり館キサラ』レギュラー出演中。アマチュア無線技士3級資格保持。
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