裏メニューに出合うために必要なこととは?
──裏メニューですか。今回の取材場所である『美華飯店(みかはんてん)』のマスターの井手さんと、女将さんにも聞いてみましょうか。
女将さん「(メニュー表を差し出しながら)うちは、常連さんにしか出さない裏メニューとしてカツ丼があるんですよ。常連さん限定にしているのは、作るのに時間がかかってしまうからなんです。『カレーチャーハン』ももともとはまかない飯だったけれど、テレビなどの取材で取り上げられて、今は『カレーチャーハン』目当てのお客さんも多いですね」
下関さん「オムカレーチャーハンもあるよね。卵の中がカレーチャーハンになっている」
井手さん「普通のチャーハンにエビチリとオムライスの卵部分をかけてくれっていうリクエストもあったよね」
下関さん「そういう注文を聞いてくれるのが町中華のだいご味なんですよね」
──なるほど、奥深いのですね。でも老舗だと女性が入るのには勇気がいる店構えの場合もありますが……。
下関さん「あえて入らなくてもいいですよ。お店の前を通るときに、“何て店名なんだろう?”とか“どういう外観かな?”って興味を持って、“ちょっと飲食サイトで調べてみようかな”って思ってもらうだけでいいんです。町中華の楽しみ方って、実際に食べる部分は低かったりするんですね」
──どうしても、「町中華」というと古い暖簾をくぐるようなレトロなイメージが浮かびますが、実際はどうですか?
下関さん「町中華の言葉が出始めたころ、テレビなどのメディアが“床がぬるぬるしている店がおいしい”って言ってイメージ作りをしていたんです。ロケ取材に行ったときに“床がぬるぬるしていますか? “なんて聞いて、店にすごく怒られちゃうこともあって……(苦笑)。でも実際は、床が汚れているのって、掃除が行き届いていない証拠。それはお客さんのことを考えてないし、あとは調味料の容器が汚れてる店っていうのも、あまりおいしくないんですよ。やっぱり、ちゃんと店も掃除してあるところがおいしいです。あとは芸能人のサインがたくさん飾ってある町中華はおいしいっていうのもありますね」
──お店自体を見る楽しさもあるのですね。
下関さん「先ほどの家族経営の話にもつながりますが、あまり昭和創業っていうことにこだわるのも違うかなと思います。平成にできた名店も多いし、新しく暖簾分けして令和に誕生した町中華もありますから」