うまくいかなくなったときこそ、自分の中の「毒」が見えてくる
うまくいかなくなったときの、もうひとつのデトックス。
それは、自分の中にたまった“慢心”という毒を出すことです。
例えば、デビューしてすぐに大人気になったタレントやお笑い芸人が、あるときを境に、あっという間に人気がなくなることがあります。
そんなとき、いきなり人気が出て天狗になり、番組の若いスタッフなどに横柄(おうへい)な態度をとっていた人は、周りから「これ幸い」と離れられてしまいます。それこそ、周りから、サーッと人がいなくなる。
人気絶頂だったアイドルが、自信過剰から記者会見で横柄な受け答えをして、一気に仕事がなくなったのを見たことがあります。
一方で、どんなに人気があっても「今の人気は周りのみなさんのおかげ」という態度を貫いて、末端のスタッフにまで気を遣っていた人は、いざ人気がなくなっても、それまでに関係を築いていたスタッフから次の仕事の声がかかります。周りの人が、「あの人とまた仕事がしたい」って思ってくれるからです。
ビートたけしさんは、若い番組スタッフなどにご飯をごちそうしたとき、帰り際によくこんなことを言っていたそうです。
「売れなくなったら、使ってね」
いつか、自分が売れなくなるときが来たら、番組に使ってね……というお願いです。さすが、たけしさんは人気者になったあとでも慢心がありません。
うまくいかなくなったときは、「もしかしたら自分は、周りに対して横柄な態度になっていたかもしれない。調子に乗っていたかもしれない」と、それまでの自分の“驕(おご)り”に気がつく機会になる。
これがふたつ目のデトックスです。
うまくいかなくなったときは、“下心があって自分に近づいている人間”と、“自分の中にあったかもしれない慢心”という、ふたつの毒を出すチャンス。
そう考えれば、感謝できます。
ちなみにEさんも「半沢直樹に出てくるような、なかなかできない経験をさせてくれて、ものすごいスピードで自分を成長させてくれた輩に感謝している」とおっしゃっています。
(文/西沢泰生)