ヘアスタイルを変えることがコンプレックスと向き合う第一歩に

──スタイリストとして、お客さんと向き合ううえで大切にしていることは何ですか?

「自分に自信が持てない方は、何かしらのコンプレックスを持っていることが多いです。そんな人はコンプレックスを口に出すのも恥ずかしい。だからこそ、それを気軽に話せるようになれば、自分のコンプレックスに向き合えるようになってきます。

 少しでもそういう機会が提供できるよう、カット中はできるだけ相手の緊張がほぐれるようにと、こちらからいろいろ話しかけたり、お聞きしたりしています。これは持論なんですけど、コンプレックスがなくなれば自信がついて、短髪やマッシュなど、どんな髪形にも挑戦できるようになります。

 それでさまざまなヘアスタイルを楽しめるようになれば、人生はもっと楽しくなると思うので、できれば早めにコンプレックスをとっぱらってしまったほうがいいわけです。“ヘアカットが、その一歩になれるように”ということを、常に意識しています」

──自分だけでコンプレックスに向き合うのは勇気がいるし、なかなかできないことなので、やはり大月さんのような美容のプロと話をするのがいいのでしょうか?

「そうですね。お客さんとの場が和むように接しているのはもちろんですが、“どこか、気になるところはありますか”と尋ねながら、会話の中でコンプレックスに感じているところを探っていくので、お客さんもコンプレックスを意識せずに話せると思います」

──だから、リピーターの方も多いんですね。

「ありがたいことに、ご来店いただいてから、その後も通ってくださるお客さんがたくさんいます。でも個人的には、一度お越しいただいたときに、美容室で髪を切る楽しさを実感してもらえたら、他の美容室に変えてしまってもいいと思っています。

 それもひとつの楽しみなので。いろんな美容室に行って、いろんな髪形を試して自信をつけてもらえたらいいと思います」

大月さんとお客さんの心の距離は常に近い 撮影/廣瀬靖士
『DIECE SHIBUYA』 撮影/廣瀬靖士
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 次回は、編集スタッフが実際に大月さんにカットしてもらい、ビフォーアフターの変化を体験します! そのほか、平成と令和で変わってきたという、男性の“カッコいい”についての変化や、誰でも簡単にセンスのよさを身につける方法についてお聞きします。

(取材・文/西谷忠和、編集/本間美帆)