盲導犬に遭遇したときにしてはいけないこととは

池田さんが盲導犬に最初に出会ったのは、中学生のとき。読書の時間に読んだ『盲導犬クイールの一生』で盲導犬の存在を知ったという。大学生になって参加した募金のボランティア活動で、盲導犬の受け入れ拒否の話を聞き、盲導犬の理解を広げる活動に興味を持ち、大学卒業後に日本盲導犬協会に就職。現在は広報として盲導犬の普及活動を担う 撮影/齋藤周造

 路上や駅のホーム、電車の中などで盲導犬を見かけると、気になって見つめたり話しかけたりしたくなるものです。でも、盲導犬は仕事中です。私たちはどのように振る舞うのが正解なのでしょうか。まずはNGな行動から伺いました。

「盲導犬を見たらうれしくなってしまいますよね。でも、盲導犬に声をかけたり触ったりすると、犬は仕事よりもその人に注意が向いてしまいます。日本盲導犬協会ではいつも、盲導犬を見かけたときに“しないでいただきたいこと”を4つお話ししています

1. 声をかけない。
2. なでたり触ったりしない。
3. 食べ物や飲み物を見せたり与えたりしない。
4. じ〜っと見つめない。

 犬に声をかけないこと、触らないこと、食べ物や飲み物を与えないこと。そして、意外にも「見つめること」もNGです。

声をかけることも触れることもしてはいけないため、ついじっと見つめてしまうんですよね。でもこれも、盲導犬にとっては注意が向いてしまい、うれしくなって立ち止まったり、見つめる人に体を向けたりしてしまいます。ユーザーには、なぜ盲導犬が止まっているのか、何に興味を示しているかがわかりません。曲がり角だと勘違いして指示を出し、車道に出たり段差でつまずいたり、危険につながることもあります。盲導犬の興味を引くことはしないようにお願いをしています

 人はもちろん、ほかの犬との遭遇も気になるところです。愛犬との散歩中に盲導犬に出会ったら、ユーザーに「犬がいます。先にどうぞ」などの声をかけると安心です。

私たちがすべきは盲導犬ユーザーへの「声かけ」

私たちにできるサポートとは? 撮影/齋藤周造

 声をかけたり触ったり、見つめたり、盲導犬の注意を引く行動をしてはいけないことがわかりました。では、私たちにできることは何かあるのでしょうか。

「盲導犬の注意を引かないようにとお話をすると、盲導犬ユーザーにも声をかけてはいけないと感じる方が多くいらっしゃいます。でもユーザーにはやっぱり声をかけていただきたいです。むしろ積極的に声をかけてほしい場面もあります

 声をかける場面としてまず教えてくださったのは「横断歩道」です。

盲導犬は信号の色を判断することができません。ユーザーは横断歩道で立ち止まって、車や周囲の音から横断するタイミングを判断しています。そんなとき、“赤ですよ”“いま、青ですよ”と声をかけていただけると、より安全に横断歩道を渡ることができます。これは、盲導犬ユーザーはもちろん、白杖を使っている方にも同様です

 また、道に迷っている様子が見られたときも声をかけてほしいと池田さんは言います。

盲導犬と一緒に同じ場所を行ったり来たりしたり、ユーザーが周囲を見回したりしているときは、道がわからなくなって困っている可能性があります。道を聞きたいけれど、どこに人がいるかがわからないときもあるんです。そんな場面を見かけたら、“何かお困りですか?”“何かお手伝いしましょうか?”などと声をかけていただきたいですね

特徴をつかんだ言葉で話しかけるのがコツ

 とはいえ、突然声をかけるのは勇気がいります。スムーズに声かけをするためのちょっとしたコツを聞きました。

「駅のホームや路上などの周囲にたくさんの人がいる場所では、“あの〜”“すみません”などの言葉で話しかけても、自分への声かけだと気づかない場合が多いです。声をかけるときは、“盲導犬をお連れの方”“白杖をお持ちの方”などと、特徴を含んだ言葉でわかりやすく呼びかけてみてください。ユーザーは声をかけられたことがわかり、反応がしやすくなります

声かけフレーズ
・盲導犬をお連れの方
・白杖をお持ちの方

 声をかけても気づかれず、心が折れてしまう方もいるといいます。でもこれは相手に伝わっていないだけのこと。呼びかけの言葉を工夫することで、しっかり声が届きます。

「声さえかけてくだされば、盲導犬ユーザーや白杖を使っている方も何をしてほしいのか、必要としているサポートを話してくださいます。サポートが可能であれば、ぜひお手伝いいただければと思います

 ただ、日ごろから声をかけることに慣れていないために、肩をトントンしたり強引に案内を始めたりする方もいるんだとか。

突然肩や腕に触れると驚かせてしまいます。バッグに触れる方もいらっしゃいますが、盗まれるのでは、と不安を抱かせてしまいます。難しく考えず、声をかけることがいちばんです