時代は確実によくなっている。今の若者は「いい人」が多い

──大学教員時代を経て、今の時代は先生から見ていかがですか?

「お年寄りは今の時代を批判するけど、確実によくなっていると思いますよ。悪いのは経済だけです。長期的には心配してない。何より今の人たちは感じがいいですよ。私はもう学校をやめちゃってるから10代の子はわからないけど、接している20代30代はみんな感じがいい

──「感じがいい」とは?

確信犯で戦略的なのか、偽善的になることで世の中がよくなるようにと意識しているのか、真意はわかりませんけれども、『いい子』です。でも、いい子ではあるけれども、世界が狭い。それに、自分の中の闇を見つめる勇気はないんですよ。いい子でいる自分がおそらく好きなんでしょう

──「いい人」は自分の闇を見つめられない人でしょうか?

「いい人であろうとする人たちは自分の中にある闇を見つめようとするのがイヤな人たちです。基本的にはそうです。自分がすごく意地悪で、自分がすごく嫉妬深くて、人の足を引っ張って……という部分なんかを見つめるのがイヤな人たち。だから私の書く本なんかは特に大っ嫌いですよ(笑)

──そのまま生きていけるものでしょうか?

「まぁ、徐々に闇を取り込めるようになっていって、そのうえでいい人であろうとするでしょうね。ある程度、思考できる力があればそうなると思います」

これから生き延びるのは「いい人」であるワケ

──いい人は馬鹿を見ることが多いとよく言います。過酷な時代でも「いい人」は生き残れますか?

いい人じゃないと生き残れないでしょう

──先生は過去のご著書の中で、お人よしタイプは搾取されるということを書いておられていたことがありますが、時代に合わせてアップデートされたのでしょうか。

これからはルールを守って信頼されるみたいな生き方をしたほうが得なんです。神様がどうこう、道徳がどうこうではないんです。お人よしであることが生き残るための社会的スキルとして活かされてくるような時代が来ると思います。岡田斗司夫さんが言う”いい人戦略”の『ホワイト社会』ともいえるでしょうね」

──信頼されるいい人が生き残ることができる理由について、もう少し詳しく教えてください。

この歳になって振り返ると、世間っていうのは馬鹿じゃない……馬鹿って言っちゃいけないか。やっぱり世間は騙せないんですよ。人を欺いたり、人のものを盗んで得するというのは長続きしないです。社会システムの上のほうにいて、人から絶対に見えない場所で搾取できるみたいな層ならいざ知らず。庶民層ではそういうのは無理なので。情報社会で真実が暴かれるペースが速くなっているでしょう。どんどん暴かれていくので、不正はバレていく。会社でも内部告発があるでしょ。今は我慢せず、みんな書いちゃうから。すっぱ抜かれるのはいいことですよ」

──危険を回避しやすい?

「今の若い人たちは、就活の際に情報を収集して企業をリサーチしていますね。ここはセクハラが多いとか。中で働いている人の不満が情報化されて外から見える。中の人が納得して働いてないという会社はやっぱり駄目なんですよ」

──もし知らずに入ってしまったら、逃げてもいいですか?

逃げていいでしょう。どうしても劣悪な環境、職場ってあるんですよ。しょうがないですね。職場を変えるのは全然いいと思いますよ、履歴書に書ける程度なら(笑)。1年くらいでコロコロ変わっていると、あとから自分の職歴を追っかけるのが大変だと思いますよ。あんまり変わると自分でも把握できなくなって、年金をもらい損ねてしまうかもしれない。そこだけ気をつけないとね」

 後編(1月31日18:00配信)に続きます。

(取材・文/七尾びび)

藤森かよこ=著『馬鹿ブス貧乏な私たちが生きる新世界無秩序の愛と性』(KKベストセラーズ刊)※記事内の写真をクリックするとAmazonの紹介ページにジャンプします

《PROFILE》
藤森かよこ(ふじもり・かよこ)
大学教員を経て著述業にいたる。1953年、愛知県名古屋市生まれ。南山大学大学院文学研究科英米文学専攻博士課程満期退学。元祖リバータリアン(超個人主義的自由主義者)である、アメリカの国民的作家であり思想家のアイン・ランド研究の第一人者。アイン・ランドの大ベストセラー『水源』『利己主義という気概』(ともにビジネス社)を翻訳刊行した。著書に『馬鹿ブス貧乏で生きるしかないあなたに愛をこめて書いたので読んでください。』『馬鹿ブス貧乏な私たちを待つろくでもない近未来を迎え撃つために書いたので読んでください。』(ともにKKベストセラーズ)や『優しいあなたが不幸になりやすいのは世界が悪いのではなく自業自得なのだよ』(大和出版)がある。