地下鉄の“先達”ともいえる都電の名残りも
東京の地下鉄が現代のように網の目になる前、都内の路面は都電が縦横無尽に走っていた。都電にとって代わった地下鉄には、都電の停留所(電停)と同じ駅名も採用されていることがある。
全盛期の都電路線図と現代の地下鉄路線図を見比べると、有楽町に東京都庁があった時代、都電にも当地に「都庁前」電停があった。都庁前電停の標識は大江戸線・都庁前駅に保存されていて、都電との連続性を意識していることがうかがえ、「水天宮前」も都電の電停名に採用されていた時代がある。
また前出の銀座線や丸ノ内線など古い地下鉄の駅は都電と共存していて、都電やバスに多い「〇〇前」の命名も受け入れられ定着していたようだ。
2000(平成12)年に全線開業した大江戸線では都庁前駅を除いて施設名の後に「前」をつけない(国立競技場駅・築地市場駅)。地下鉄の駅の命名基準が「路面電車・バス」から「鉄道」に近づいているという感覚を覚える。
厳密な命名法則があるわけでもなく、「前」がついていてもいなくても駅の利便性に本質的な違いはない。ただそれぞれの駅・路線の成り立ちにもちゃんと由緒があり、東京の歴史をより面白くしてくれていた。
(取材・文/大宮高史)