孤独に戦う我慢勝負からの、経験者が多そうな“自動改札バトル”も外せないよね〜

 やっぱりベタに速さを競うスピード系が多くなっちゃうね。じゃあ、スピードとは逆に我慢の勝負。よく言うのがサウナね。自分があとから入って、先に入っていた人より先に出ないとかね。サウナの中で誰かひとりライバルを見つけて、あの人より先に出ない。その人が先に出て自分が勝ったと思ったら、また新たな刺客が現れての無限ループ。命からがらで脱出し水風呂へ。またそこで繰り広げられる我慢の勝負。

 第2ステージは冷たさ。血管の収縮すごいな。みんな冷たさに耐えられないのでしょう。何人もが入ってはすぐ出ていく水風呂で僕は、「ハイ勝ち、ハイ勝ち」と勝負に勝っていくのです。サウナより水風呂で勝つほうが難しいって前から言ってんだけど、誰も賛同してくれないんだよね。もっといろんな媒体で言っていこう。「サウナあるあると言えば、水風呂で一緒に入っている人より先に出ると負けだから、寒いけどすました顔で我慢するよね」って。ウケないけどね。なんで水風呂のほう? ってなるけどね。いいの。言い続けるの。僕ひとりの我慢の勝負。

 あと友達とかと神社にお参りに行くと、「二礼二拍手一礼だよね」って、われ先にと誰かが言うんだよね。そのあとの手を合わせて祈っている時間の長さ勝負ってのもあるね。なんか先にやめたくない。ひとつでも多く願い事を、という欲深さも後押しして誰よりもいちばん長く手を合わせ、目を開けて振り返ればみんなが自分待ちをしていたら勝負に勝った。でも、なんか虚しいんだよね。そんなことでみんなを待たせたという罪悪感。こんな自分がみっともない。神様ごめんなさい。

 そうだ、駅でもうひとつ。こっちの経験者のほうが多いかな。自動改札で向かいから人が来たときね。先にタッチしたほうが通れるからね。必死にタッチしにいくのも違うんだよね。あくまでもスマートなタッチの差で勝ちたい。「え、何かありました?」って、おすまし顔で勝ちたい。で、負けた相手は横の改札に、勝者は自分のために開かれたランウェイを通るんだけど、勝ったはずなのに気持ちよくないんだよね。自分に対して、だから何だよって感じ。相手はあえて譲ったのではないか、譲った相手の勝ちなんじゃないかってね。それで次のそういうギリギリの勝負のときにあえて譲ってみたの。そしたら、そっちのほうが気持ちいいんだよね。人に譲ったほうが。でもまた忘れて勝ちにいっちゃうんだけどね。その繰り返し。「勝つ」って何だろうね。

 勝負はスピード系が多いので、時間を表す砂時計のイラストを書きました。題名は「砂風呂って熱いよね。サウナの中の砂時計の砂は、もっと熱いよね」です。ひっくり返さないでね。

(文・絵/つぶやきシロー)


【PROFILE】
つぶやきシロー ◎1971年3月10日、栃木県生まれ。お笑いタレントや俳優として活動するかたわら、2011年からは小説も執筆。2021年には、著書『私はいったい、何と闘っているのか』(小学館刊)が安田顕主演で映画化された。2022年4月、新著『こんな人いるよねぇ~──本を読んでつぶやいた』(自由国民社刊)を上梓。また、2009年から公式Twitterでほぼ毎日「あるあるネタ」をつぶやき続けて大人気に。フォロワー数は103万人を超える。(2023年1月現在)
公式Twitter→@shiro_tsubuyaki

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