鈴木伸之演じる“悟郎”はなぜ憎めない?
なぜ、こんなにも悟郎は憎めないのか。考えた結果、それは“巧妙じゃない”ところにあるのではないかと思いました。
悟郎は基本的にまっすぐな男。自分のダメなところも隠そうとはしません。というか、自分で自分のやっていることが一切ダメだと思っていないんですよね。だから、ついつい周りが文句を言いながらも世話を焼いてしまうんですが、それに対して「助かるよ〜ありがとう」と素直にお礼が言えちゃうところもまたずるい。
妻である蛍への愛情表現もストレートです。離婚届を置いて家を出て行った蛍に帰ってきてほしくて、いい夫になることを決意。今までやってこなかった家事にチャレンジして、その様子を写真とともにLINEで蛍に逐一報告する悟郎がとても可愛く思えました。
それなのに忙しくて、蛍が帰ってきたときに限って部屋を散らかしっぱなしな悟郎のタイミングの悪さも憎めない理由のひとつ。普段は自分が忍者であることを必死で隠している悟郎ですが、第5話ではうっかりミスで隠し部屋が蛍に見つかるなど、忍者のくせに詰めが甘いのなんの。だけど、そういう巧妙になりきれない部分から悟郎の人のよさが見えてきます。
悟郎が伊賀忍者なのでは? と疑う父・竜兵(古田新太)に蛍が「あんな鈍臭い人が忍者とかありえない!」と思わず笑ってしまうような、ある種の信頼感。それが本来は他人である夫婦が生活をともにするうえではかなり重要になってくると思うのです。とはいえ、悟郎が憎めないのは鈴木伸之さんが演じているからという理由も大きいのですが。
鈴木伸之が魅せる、屈強さと愛くるしさのギャップ
185センチの高身長とがっしりした体格を生かし、映画『HiGH&LOW』シリーズや『東京リベンジャーズ』などで屈強な男性を演じてきた鈴木さん。一方、場合に応じてその威圧感を一切消し去ることができ、見た目と中身にギャップのあるキャラもハマります。
特に、『恋です! 〜ヤンキー君と白杖ガール〜』や『悪女(わる)〜働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?〜』(ともに日本テレビ系)では演じる役の喜怒哀楽をコミカルな演技で披露しており、しっぽの加減で感情がわかる大型犬のような愛らしさがありました。
悟郎も同じでダメなところはたくさんあるのだけど、やっぱり嫌いにはなれません。どうか幸せな未来が訪れてほしいと願わずにはいられない忍者夫婦の行く末を最後まで見届けたいと思います!
(文・苫とり子/編集・FM中西)