真中信太郎と自身の共通点がリアルな二面性をつくる

 高橋さんは、自身のInstagramの投稿に、“法曹界の厳しさを実感した”と、つづっていました。1日12時間の勉強は当たり前、司法試験の受験回数も5回など、劇中ではその過酷さが描かれています。

──とても厳しい世界に触れてみていかがでしたか?

「弁護士や検察官の方は、僕ら一般人から見るとすごくカッコいいですよね。ただ、法廷で戦う姿はドラマでしか見たことがなくて、身近に弁護士を目指している人もいなかったので、“聞きなじみはあるけれど、遠い存在”という感覚。

 今回、演じてみて弁護士や検察官の方々がこういう道を、本当に通ってきているのが信じられないと思うくらい。僕らは演じているだけでも大変なのに、それを実際にやっていると思うと……。

 台本を読んだ段階よりも演じていく中で、ロースクールの厳しさや大変……“とんでもない大変さ”を感じています

──役作りや演じる中で気をつけた点、こだわった点は?

「気をつけたのは“オン・オフ”です。4話あたりから、真中は人として変わっていくんですけど、4話まで見ていただいた方々の印象はきっと、“表と裏がある、性格が悪い印象”だと思います。

 過去にこういう役を演じたことはなかったけど、それに近い役は経験したこともあって、二面性みたいなものはつかめていたんです。でも今までよりも、すごく人間味のある、リアルな二面性だなと感じています

──1話ではフレッシュな笑顔な印象的でしたが、第2話から少しずつ仮面が剥(は)がれていくように、そして終盤には真中の表と裏がくっきり出ていましたね。

「普通はこのタイミングで、こんなことをぼそっと言わないけど、真中は言う。ということは、“僕が思ってるよりも、少し抜けてる部分があるんだな”とか想像しています。“ここまで言うってことは、前日に何かあったのかな?”とか、想像してつくり上げていくんです。

 真中には二面性があって(表面的には顔を)使い分けているので、真中が思う真中像は、真中の自身の中にもあるんだと思います。なので、“演じている人を演じている”という感覚です。

 それは今までなかった役ですし、真中自身が“演じている感”を出しつつも、そこまで器用で天才的な二面性の人間ではない分、どの程度、どう演じている感を出すかを考えて演じています。

 身近な例で例えると、“お母さんがよその人と電話しているとき、声のトーンが変わる”みたいな瞬間って、あるじゃないですか(笑)。それと同じで、誰しも外面はあって度合は人それぞれなので、それを真中に置き換えたときに、彼がどのあたりに位置しているのかは、すごく考えました」

──真中と高橋さんの共通点はありますか?

「理解できるところはあります。今までは、理解できない人を演じるほうが多かったんですけど、似ている似ていないは置いておいて、真中に対して理解はできる。変に自分自身がつくった理想像に追いつくために必死で、自分を切り崩していくというのは、たぶん人間としてある(共通する)部分だと思っていて。

 僕だけじゃなく、いろいろな人に理解してもらえる役だと思うので、だんだんとこれから真中も変わっていくので、みんなに寄り添っていける人になっていったらいいですね。

 完璧主義でなんでもできるように見られる人って、世の中にたくさんいるけれど、“真中くんならできるよね”“真中くんさすがだね”っていう言葉が、どれほど本人にとってはつらいものなのか。

 褒められるのはすごく嬉しいけど、それが自分の中でプレッシャーに変わってしまう。これは誰でも抱えていることだと思うので、当事者のそんな胸の内を届けたいと思っています」

 インタビュー後編では、高橋さんの俳優としてのスタンスや“いま”についてお聞きしました。

高橋文哉さん 撮影/廣瀬靖士

(取材・文/柚月裕実、編集/本間美帆)


【PROFILE】

高橋文哉(たかはし・ふみや) 2001年生まれ、埼玉県出身。2019年特撮テレビドラマ『仮面ライダーゼロワン』(テレビ朝日系)で、飛電或人/仮面ライダーゼロワン役を演じる。その後、テレビドラマ『先生を消す方程式。』(テレビ朝日系)、『着飾る恋には理由があって』(TBS系)、『最愛』(TBS系)、『うきわ ―友達以上、不倫未満―』(テレビ東京系)、『悪女 (わる) ~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?~』(日本テレビ系)など、数々の作品に出演。2022年には『君の花になる』(TBS系)で佐神弾役を好演。劇中のボーイズグループ「8LOOM」のリーダーでセンターを務めた。現在放映中のテレビドラマ『女神(テミス)の教室〜リーガル青春白書〜』(フジテレビ系)に真中信太郎役として出演中。Twitter→@fumiya_0_3_1_2、Instagram→@fumiya_0_3_1_2

公式FC:https://takahashifumiya.com/

《映画情報》

『交換ウソ日記』

□詳細:

公開:2023年7月7日(金)
原作: 櫻いいよ「交換ウソ日記」(スターツ出版文庫)
キャスト: 高橋文哉、桜田ひより
監督: 竹村謙太郎
脚本:吉川菜美
製作: 「交換ウソ日記」製作委員会
配給:松竹株式会社
(C)2023「交換ウソ日記」製作委員会

映画公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/koukan-usonikki/