白髪対策、キモは「ミネラルとたんぱく質」

「白髪発生を早くする要因はさまざまですが、“食生活の乱れ”がもっとも大きな原因になっています」(辻さん)

 辻さんが指摘するのは加工食品の数々。私たちの食卓には、手っ取り早くお腹を満たすための菓子パンやスナック菓子、インスタント食品などが氾濫(はんらん)している。

こうした『加工食品』や『超加工食品』に分類されるものは、炭水化物こそ十分なものの、加工に加工を重ねることで栄養はスカスカになっています。特に不足しているのが、ミネラルとたんぱく質ですね」(辻さん)

 ミネラルとは、食物に含まれる微量元素のこと。特に身体が必要としているミネラルは「必須ミネラル」と呼ばれ、マグネシウムやナトリウム、リンやイオウなど、16種類が知られている。ちなみにこれら必須ミネラルは、食べ物として食品やサプリから摂る以外、摂取することはできない。

<必須ミネラル16種>
マグネシウム、マンガン、ナトリウム、鉄、リン、コバルト、イオウ、銅、塩素、亜鉛、カリウム、セレン、カルシウム、モリブデン、クロム、ヨウ素

(『白髪は防げる!』かんき出版刊より)

 さて、髪はケラチンと呼ばれる18種類のアミノ酸が結合してできたたんぱく質で構成されているが、髪を黒く保つためには、メラノサイトがきちんと働くことが欠かせないのは前述したとおり。

 このメラノサイトが作り出すメラニン色素は18種類のアミノ酸のひとつであるチロシンを原料に作られるが、チロシンを黒い色素に変化させるのがチロシナーゼという酵素。この酵素の働きを活発化させるのが、実はミネラルなのだ。

「ところがそのミネラルは、髪以外にも歯や骨を作ったり、身体の機能を保つために欠かすことができません。黒い髪よりも、歯や骨、身体機能の維持のほうが大切ですから、ミネラルはまず、そちらから使われます。

 つまり、ただでさえ不足しがちなミネラルが、髪を黒くするチロシナーゼの働きを活発化させる前に、もっと必要とされている部分に使われてしまっているのです」(辻さん)

 さらに髪そのものの原料となるたんぱく質も不足している。たんぱく質が豊富に含まれる食材といえば、肉類や魚介類、卵や乳製品など。肉類や乳製品はダイエットを心がける女性には敬遠されがちだし、菓子パンやスナック菓子、インスタント食品といった加工食品にも、たんぱく質は不足ぎみだ。厚生労働省「国民健康・栄養調査」によると、現代の日本人のたんぱく質摂取量は、戦後間もない1950年代と同じ程度まで落ち込んでいるという。

「先ほどのチロシンも、まず髪の毛の材料を作るために働き、余ったものがメラニン色素の原料となります。チロシンはたんぱく質に含まれているので、たんぱく質不足はチロシン不足につながります。こうしたミネラルとたんぱく質双方の不足が負の連鎖となって、白髪増加に拍車をかけているわけなのです」(辻さん)

 #2では、日常生活でできる具体的な白髪予防法について辻さんに聞いていく。

〈PROFILE〉
辻敦哉(つじ・あつや)
ヘッドスパ専門店としては日本最多の店舗数を誇る『PULA(プーラ)』創業者。管理理容師、元ヘアサロン店長。東京文化美容学校、ロンドンTONI&GUYアカデミー修了。アジアの優れた企業家に贈られる『アジアゴールデンスターアワード2017』で日本人で2人だけにしか授与されていないマスター大賞を受賞。『白髪は防げる!』(かんき出版刊)など著書多数。現在は後進の育成と、自身が考案したプーラ式のヘッドスパを習得した仲間とともに、ヘッドスパ専門店を全国展開中

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