──どういうことでしょう?

「小3のときに“サークルのような班を作る”というクラスでの取り組みがあって、僕はクイズをみんなに楽しんでほしくて“学習班”を作ったんですよね。

 その活動で“壁クイズ”といって、自分で作ったクイズを廊下に貼り出して、わかった人は僕に耳打ちしにくる、という遊びを思いついたんですよ。それがクラスですごく盛り上がったんです。壁クイズが毎日クラスの話題の中心になるくらい」

──なるほど。クイズによって、世界が広がるというか……周りとつながれたんですね。これは大きな成功体験です。

「そのとおりです。この前まで僕をいじめていた子が、僕に耳打ちで回答をしてくる光景は、うれしくて今でも強烈に覚えています。クイズを通してみんなとコミュニケーションをとれるようになったんですよね」

──つまり今のお仕事を当時からしていたわけですよね。ちなみにどんな問題を出していたんですか?

「今考えると、そうですね。当時から出題も工夫していました。例えば“歴史上の人物は?”みたいな知識量を試すクイズは学校の勉強と変わらないので、盛り上がらないだろうな、と。そこで“クラスメイトの名前”を入れた、ある・なしクイズを出題したんですね。

 たとえば“あるのほうは名字と名前の最初の文字をくっつけると魚の名前になる”という問題を出しました。田中一郎だったらタイ、みたいな。これだと知識量は関係ないし、しかも“クラスに所属している自分だけがわかる”という特別感を得られるから喜んでもらえそうだな、と思っていましたね。

 回答者が楽しんでくれるうえで “自分だけがわかる”という特別感を演出することは、今も大事にしています

──とんでもなく頭がキレる小学生ですごい(笑)。そして何より、当時から「周りに楽しんでほしい」という優しさがあったことが素晴らしいな、と思いました。

「そう言っていただけるとうれしいですね。昔から自分の喜びより、周りが楽しむ姿を見るのが好きなんですよね。

 こうして人生にフォーカスしてインタビューしていただけることは少ないのですが、今考えると、小学生のときの成功体験が自分の人生に大きな影響を及ぼしているのかもしれません」