当時のAKB48は人気順をガラッと覆すのが難しい、振付中に眠ってしまう子も

──昨今のアイドル界の体制について、どう思いますか?

「現代のアイドル活動って、私がデビューした時代とは比べものにならないくらい、本当に過酷で孤独なんですね。私が見ていたころのAKBグループなんて、総選挙で人気順が可視化されてしまっていた。握手会も、めちゃくちゃ並んでるレーンの横に、1人も並ばないメンバーがいたりする。もうその光景がいたたまれなくなるんです」

──確かに、目に見えて順位がつけられると、つらいですよね。

「そこはグレーにしておいてほしいですよね。私がモンキーズにいたころに総選挙があったら、相当病んでいたと思います(苦笑)。AKBグループの場合は、売れている子はどんどんメディアに出ていくけれど、人気がない子たちは劇場にしか出演できない……。そうすると、立場を逆転できるタイミングがまずないんですよ

AKB48の元祖“神7”を含む人気メンバーたちは、CM出演などの露出が多く、さらに知名度を上げていった

──頑張ってもチャンスがないということでしょうか。

「プロデューサーの秋元康さんが、“みんなで頑張るキラキラした女の子集団”みたいなタイプではなく、前田敦子さんのように、“本当はセンターなんてやりたくない。だから頑張っている感じもあえて見せない”っていう感じの子もいたほうが面白という考えだったんです。だからメンバーも、グループ全体で一生懸命に奮起するよりも、“どうやったらセンターになれるか”、“がむしゃらに努力しているよりも、ゆるくやっているほうがいいと思われるかも”っていうような思考になってしまう部分があったのかと。前田さんの場合は、彼女のいろいろな要素が混ざった結果、魅力的だったのであって、周囲も同じようなことをやり出すと、ただのダメな子になりますよね……

──前田さんは確かに、「何事にも全力投球!」みたいなタイプには見えませんでしたが、“絶対的エース”と呼ばれるくらいカリスマ性がありましたからね。

当時は忙しさのピークだったこともあって、振付を教えていても、稼働が多いメンバーは疲れ果てて寝ていることもあったんです(苦笑)。ひどいときは、みんなが踊っているスペースに横になっていたり。周りがそれを避けながら踊るんですよ。さすがに私も“こんな状態では振付が教えられない”って言ったら、マネージャーさんが寝ていたメンバーの腕を持って隅まで引きずっていったという光景を覚えています」