思い出話をしているときの表情を観察

――役をつかむために、壇さんご本人と直接コミュニケーションを取られたそうですが、具体的にどういったお話をされたのでしょうか。

 当時はどんなことが大変で、壇さんが金子さんとどんな話をしたのかなど、いろいろなことを伺いました。その中でも、僕が一番興味を持って聞いていたのは「壇さんが金子さんをどう思っていたのか」ということです。

「Winny」の事件とはまったく関係ないところで、金子さんとどういう話をしていたのか。金子さんの思い出を語っているときの壇さんの表情を見ていると、壇さんが持っている金子さんへの思いが見て取れるような気がしたんです。少し言い方は悪いですが、その様子をずっと観察していました。

三浦貴大さん 撮影/有村蓮

――壇さんが金子さんの思い出話をしていたとき、どんな表情をされていたのですか?

 大変な事件と裁判であったことは想像に難くないんですけど、終始楽しそうでした。たぶん壇さんは、金子さんのことを友人や兄弟、仲間のように思っていたところもあるんじゃないかな。単純にプログラマーとしてすごく尊敬していると思いますし、ほかにもいろいろな感情があると思うんです。担当弁護士としての立場を超えた感情は、確実にあるのかなと感じました。

――「裁判劇」ではなく「人間ドラマ」に重きを置かれた本作ですが、演じるうえでどんなことを大切にしていたのでしょうか。

 この作品って基本的には、実際に起こった出来事と実際にあった会話で構成されているので、演じていてもすごく難しいんですよね。最初はそれをどう演じようかなと考えたのですが、僕は映画のテーマのことはまったく考えないようにして、その当時の壇さんを演じられればいいと思ったんです。なので、先ほどお話ししたような、壇さんが当時どんな思いを金子さんに持っていたのか、金子さんとの付き合い方や、話しかけるときの仕草などをなるべく同じように表現できればという思いだけで現場にいました。