東出くんの役への集中力は尋常じゃない

――金子さんを演じた東出さんとのシーンには、常に独特の緊張感があったように感じたのですが、三浦さんは東出さんと共演されてどんなことを感じましたか。

 とにかく東出くんの役作りはすごかったです。僕も含めて、実際の金子さんにお会いしたことはないですし、写真や当時の記事などでしか拝見したことはないんですけど、「金子さんって本当にこういう人だったんだろうな」と思わせるような立ち居振る舞いを、東出くんが現場でずっとしてくれていました。

 東出くんって、役への集中力が人並み外れているというか、ちょっと尋常じゃないんですよ。 常に金子さんがそこにいるような感じがあったので、僕が少しでも「三浦貴大」でいてしまうと、彼との段差が生じてしまうというか。なので、「自分もこのくらいの気持ちで役に挑んでいなければならない」みたいな緊張感は、自分にも現場にもあったような気がします。

自分の生きる道は「うっすらクズ」なのかも?

――2010年の俳優デビューから10年以上がたちます。最初のころは好青年役が多い印象でしたが、近年はドラマ『エルピス-希望、あるいは災い-』での「どこの会社にもいそうなちょっとイラッとする人」や、映画『もっと超越した所へ。』では、プライドだけは一人前の元子役俳優、そして『仮面ライダーBLACK SUN』では、古代甲冑魚怪人・ビルゲニアと、演じる役の振り幅が広がっていますね。

 いろいろな役を演じさせてもらうのは楽しいし嬉しいです。僕が役者を始めたころに立てた目標が「俳優界の便利屋になろう」だったんですよ。便利屋って聞こえは悪いかもしれないですけど、例えば、明日から撮影が始まるという作品で「この役の人が急に降板することになってしました」となったときに「じゃあ三浦を使ってみるか」と思ってもらえる俳優が、実は一番強いんじゃないかと考えたんです。

 最近は「うっすらクズ」みたいな役が多いですね。しかも、そういう作品ばかりがやたら評価されているので、もしかしたら僕の生きる道はそっちなのかなって(笑)。完全に嫌なヤツじゃないけど「こういうヤツっているよな」とか「あいつムカつくけど、なんか憎めないんだよな」という役は、演じていても結構楽しいです。

三浦貴大さん 撮影/有村蓮

――そういう人って身のまわりに1人はいるから身近に感じるし、観ているほうも感情移入しやすいところはありますね。

 そうですね。なので、どんな役でもなるべく「リアルにいそうな人」と思っていただけるように演じたいですし「なんでも演じられる人」になりたいです。

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 後編では、年齢を重ねてきたことで変化したお父様・三浦友和さんへの思いや、大好きなあんこへの思いを熱くお話ししていただきます!

(取材・文/根津香菜子、編集/福アニー、撮影/有村蓮)

【Profile】
●三浦貴大(みうら・たかひろ)
1985年11月10日生まれ、東京都出身。2010年、映画『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』で俳優デビューし、同作で第34回日本アカデミー賞新人俳優賞等を受賞。近年では『栞』『ゴーストマスター』『初恋』『流浪の⽉』『キングダム2 遥かなる⼤地へ』など話題作に出演。

【Information】
●映画『Winny』
2023年3月10日(金)公開
監督・脚本:松本優作
出演:東出昌⼤ 三浦貴⼤ 皆川猿時 和⽥正⼈ ⽊⻯⿇⽣ 池⽥⼤ ⾦⼦⼤地 阿部進之

公式サイト:https://winny-movie.com/