先の会話を予想して、「6行会話」をつくってみる

 林さんによると、コーチングの世界では、「過去」ではなく「未来」に目を向ける「未来志向」に重きを置いて発想するそうです。

 ですから、会話では相手の言葉を聞いたとき、「この先、どんな会話が展開されるだろうか?」と想像することが大切。

 その練習として最適なのが、まるで自分が脚本家になったつもりになり、会話の続きをシナリオにしてみることなのだとか。シナリオ化が難しいのであれば、6行くらいの会話にしてみるだけでも「未来志向」が鍛えられるとのこと。

 では、ちょっとやってみましょう。

 会話の1行目は「昨日ラーメンが食べたくて、いつもの店に行ったら休みだったんだよ」に対する「受け答え」です。

 さあ、何と言うか?

 答えは簡単で、まずは相手の言葉を復唱するのがベストなのです。

「へえ、そうなんだ。いつも行く店に行ったら休みだったんだ」

 この1行目ができれば、あとは想像力に任せて、2行目は何でもオーケー。

「それでさ、仕方ないから、初めて行くラーメン屋に行ってみたんだよ」

 それを受けて、3行目も復唱です。

「そうなんだ。初めてのラーメン屋に行ったんだ」

 そして、4行目。

 実際に6行会話をつくるとわかりますが、ここで初めて、相手は「本当に言いたかったことを言ってくれます。例えばこんな感じ。

「そしたら、すごくおいしくてさ、いつも行く店が閉まっててよかったよ」

 やっと相手が「言いたいこと」を言ってくれましたから、次はあなたの思うことを伝えます。

「そんな店があったんだ。もっとくわしく教えてよ」

 最後の6行目に、“あなたの言葉に対して相手が返してくると思う”言葉を書きます。

「お店のホームページのURLを送るよ。そのうち、一緒に行こう」

 出来上がった会話は次のとおりです。

「昨日ラーメンが食べたくて、いつもの店に行ったら休みだったんだよ」

「へえ、そうなんだ。いつも行くラーメン屋に行ったら休みだったんだ」(復唱)

「それでさ、仕方ないから、初めて行くラーメン屋に行ってみたんだよ」

「そうなんだ。初めてのラーメン屋に行ったんだ」(復唱)

「そしたら、すごくおいしくてさ、いつも行く店が閉まっててよかったよ」(相手が伝えたかった本題)

「そんな店があったんだ。もっとくわしく教えてよ」(あなたの考えや意向)

「お店のホームページのURLを送るよ。そのうち、一緒に行こう」

 相手の言葉に対して、こんな「6行会話」をつくる想像をして練習することで、コミュニケーションがスムーズに運び、人間関係が良好になる会話術が鍛えられるのです。

 たしかに、少し想像力を働かせて「6行会話」をつくってみると、最初に例にあげた、相手の「本当に言いたいこと」をつぶしてしまう「返し」が、いかに“不毛な返し”であったかがよくわかります。

 相手との会話がうまく進まないと悩んでいる方。ぜひ、「相手の最初の言葉に対する6行会話」を、つくってみてください。

※参考:『否定しない習慣』(林健太郎著 フォレスト出版)

(文/西沢泰生)