声優界のレジェンドと遭遇

 最後に、私自身が経験したレジェンドのサインの話。

 それは今から4、5年前、地下鉄銀座線の某駅でのこと。ホームで声優の野沢雅子さんをお見かけしたのです。

 野沢さんといえば、言うまでもなく『ドラゴンボール』の孫悟空や『銀河鉄道999』の星野鉄郎などで知られる、声優界のレジェンドです。

 子どものころからのファンである私は、どうしてもサインが欲しくなり、用もないのに同じ電車に乗り込んでしまいました。

 そして、ツツツーッと、座っている野沢さんの前まで行くと、意を決し「あの、失礼ですが、野沢雅子さんでいらっしゃいますよね」と声をかけたのです。

「あ、はい」と野沢さん。

 その声に私はシビれました。だって、まさに、子どものころから親しんできた「あの声」だったのです! 聞いた途端、もう、感動で鳥肌が!

「初代の鬼太郎(『ゲゲゲの鬼太郎』)からの大ファンです。プライベートなお時間に申し訳ありませんが、サインをいただけないでしょうか」

 そう言って、サインペンと手帳を差し出しました。

「色紙がなくて失礼します」

 そう恐縮する私に、レジェンドはほほ笑みながら、サラサラとサインを書いてくださったのでした。

 そのときにいただいたサインは、手帳から切り離し、額に入れて私の部屋に飾ってあります。図らずも、さんまさんから割り箸袋にサインをもらった方と同じように、宝物にさせていただいているのです。

 やっぱり、たとえどんな物に書いてもらっても、“ファンにとって、サインは宝物なのだ”ということが、よくわかります。

 サインを頼まれたときの、有名人の対応は人それぞれ。中には、“プライベートの時間は放っておいてほしい……”と、サインには応じない人もいるでしょう。それはそれで、本人の自由です。

 でも、スター……とくにスーパースター級の人たちほど、「自分のサインが相手にとって宝物になる」ということを理解して、快くサインに応じているように思えるのです。

 ちなみに、こんな私でも、私の本を買ってくださった方からサインを頼まれることがあります。

 そんなときは、いつも、「ありがとうございます。サインでもコサインでもなんでもします」と言って笑っていただいてからサインを書くようにしています。

(文/西沢泰生)