難解なタイ語を習得するコツとは
通訳・翻訳歴も20年を超え、自在にタイ語を操っているが、常に勉強や知識の吸収は必要だという高杉さん。同時通訳も行っているが、これもさまざまな通訳の現場で、独学で身につけた技術だという。
「映画祭で、監督が観客から直接質問を受け付けて答えることがよくあるのですが、このときに同時通訳のスキルが自然と身についていきました。例えば、観客が質問しているときに、発言を終えてから訳すよりも、聞きながら訳したほうが、時間が半分で済むわけです。
そのほうが、たくさんやりとりできて楽しいんじゃないかって、ここでもお節介な気持ちが働いて、同時通訳ができるようになっていったわけです」
タイ語は、独特なタイ文字に代表されるように、難解な言語のひとつといわれている。しかし、日本でタイドラマブームが起きたのをきっかけに、「タイ語を勉強したい!」と思う人が増えている。
以前は「タイが好き」「旅行でタイにハマった」「仕事でタイに行くから」といった理由でタイ語を学ぶ人が主流だったが、最近では一度もタイに行ったことがなくても、「タイドラマを見て」「タイ人俳優のSNSを理解したい」といった理由で、タイ語学校に通う人も少なくない。
「タイ語上達のコツは、タイ人が話すタイ語を、とにかくたくさん聞くこと。タイ語を勝手に自分で解釈しないこと。タイ語を勉強する人には、最初は日本人の先生をおすすめします。その先生もタイ語を習得するのに苦労した経験があるので、それを踏まえたうえで教えてもらえるからです。
タイ人の先生に教えてもらうのは、文法やタイ文字がある程度理解できるようになってからで十分です」
このようにタイ語の通訳・翻訳者として経験を積み重ねてきた高杉さんの仕事が、2020年に一変することに。タイドラマブームが日本に到来したからだ。
(取材・文/吉川明子、編集/本間美帆)
【PROFILE】
高杉美和(たかすぎ・みわ) タイ語通訳者・翻訳者・コーディネーター。タイのエンタメ領域を中心に、一般通訳を行う。撮影誘致コーディネーターとして、『STAY Saga 〜わたしが恋した佐賀〜』のドラマ制作に伴い、佐賀県への誘致に携わり、その他、東京オリンピック・パラリンピックの事前キャンプ誘致のコーディネート、現場通訳の仕事も行っている。