2023年、「吉本興業株式会社」は創業110年、吉本新喜劇は創設から64年を迎える。笑いの力で日本じゅうに元気を届けてきた吉本新喜劇のGMを務めるのが間寛平さん、そして座長としてメンバーをまとめあげているのが、すっちーさんだ。このふたりが中心となり、今月21日には、なんばグランド花月で「吉本新喜劇記念日2023」公演が行われる。3月1日の吉本新喜劇設立記念日を祝う特別イベントだ。
当日は、昨年から新喜劇の新名物となっていた「GM杯ネタバトル」の最終決戦や、昭和の時代から愛されてきた芝居『あっちこっち丁稚(でっち)』が上演される。後者は大阪の老舗カステラ屋を舞台に、家族や従業員が織りなす人間ドラマで、間寛平さんは20代のころと同じく丁稚(職人・商家などに年季奉公をする年少者。雑用や使い走りをした)を演じ、すっちーさんは店のお手伝い役を務めるとのことで、注目が集まっている。
インタビュー第1弾では、そんなふたりに、「吉本新喜劇記念日2023」に向けた心境や、昭和世代と今の芸人とで異なる点、新喜劇の劇場には「笑いの神様が住んでいる」というエピソードを伺った(記事→間寛平「昨年10月に引退のつもりだった」とどまらせたものと、“昭和と令和における芸人の違い”)。今回はどんなトークが繰り広げられるのか──。
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すっちーが「隙のある人間でいよう」と思う真意とは?
──ところで、もし吉本に入ってなかったら、どんなお仕事についていたと思いますか?
すっちー 僕はもともと車の整備士をしてましたから、車関係かなあ。うーん、何してたやろ。想像つきません。
寛平 僕は、天文学博士。
すっちー なれるか! 芸人だけや!!
寛平 ね、ソッコーでこれですわ(笑)。うまくツッコむなあ。
すっちー ツッコむしかないやん(笑)。上は87歳の桑原(和男)さんから下は20歳そこそこまで、幅広い年齢層がいるのが新喜劇。いろんなことを教えてもらって、もちろん尊敬もしてるけど、ずっと同じ楽屋にいて話をして、一緒にごはんを食べて、すごく関係が近くて濃いんです。だから大先輩にもツッコんでしまう……。そういう関係性で作る笑いだからこそ、どんな世代の人にも受け入れてもらえるのかもしれませんね。
寛平 そやなあ。今は世代ごとに線が引かれてしもてる場面が多いから。すっちーは座長として、どういうことを心がけてる?
すっちー 基本的に、隙のある人間でいようと思うてます。いい意味で、なめられとかなあかんかな、と。座長になった当初は気負っていたのか、周囲に厳しく言ったこともあるんです。でも、それは自分にも無理をさせてたし、周りも萎縮する。これは違うな、と。ほんまはスベッたらダメなんやけど、そこで怒ったら、チャレンジしなくなるでしょ。だから楽屋で「スベッてたなー」といじって笑いに変えて、もう一度、やってみようと思わせるようにしています。風通しをよくして、若手が何でも言えるような雰囲気にしておかないと。
寛平師匠が「かわいさ」を大事だと考えるワケ
寛平 それは大事なことやね。僕は、「人のことを言うな、最終的には“自分や”」とよく言いますね。どうやったら出番が増えるのか。頑張ったらええやん。それだけ。たまにいるんですよ、なんであいつの出番が多いのかと文句を言うようなのが。妬(ねた)んでいる暇があったら、自分が頑張ったらええ。みんなで仲よく頑張ったらええ。媚び売って出る必要はないんやし。それとね、もうひとつ大事なことは、「かわいさ」だと思います。新喜劇はお客さんが育ててくれる、お客さんに育ててもらう場所。だから笑顔でいないといけない。悪いことを考えていると、やっぱり悪い顔になっていくんです。僕、なってないですか?(眉間にぐいっとしわを寄せる)
すっちー めちゃめちゃ悪い顔になっとるやん!(笑)。丁寧に話を振るなあ。