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社会

離婚後の「共同親権」導入は本当に子どものためになるのか? 面会交流を強制された子の“心の傷”を無視しないで

SNSでの感想
離婚後の単独親権について見直すかどうか議論が進められている(写真はイメージです)
目次
  • 子どもの意に反する面会交流を強制されることがある
  • 子どもが別居親に会いたがらないのは同居親のせいではない
  • 子どもの心の傷に気づかない人たち

 日本では子を持つ夫婦が離婚するとどちらか一方が親権者になる「単独親権」が採用されていますが、現在、国の法制審議会が親権制度を見直すかどうか議論を進めています。父と母の双方を親権者とする「共同親権」を導入する案も検討される中、この親権問題についてジャーナリストの林美保子さんがリポートします。<前編>

  ◇   ◇   ◇  

 離婚後における共同親権制度を導入するか否かが検討されている。

 私は親権問題について、さまざまな意見を見聞きするうちに違和感を覚えるようになった。「子どものために」と大人たちが声高に叫んでいるわりには、子どもの声が拾えていないからだ。そこで、自らが親の離婚を経験した元・面前DV被害者(夫婦間暴力を目撃しながら育った子ども)としての立場から、この問題を考えてみたい。

子どもの意に反する面会交流を強制されることがある

 離婚した両親の意思疎通がうまくいっていれば、子どもは両親間を自由に行き来できるが、そうはいかない場合、別居親が家庭裁判所の取り決めに従って子どもに会う「面会交流」という制度がある。

 2011年の法改正以来、裁判所は「どちらの親からも愛されていることを実感してこそ、子どもは健やかに育つ」という理念のもと、面会交流は原則実施の立場をとってきた。

 離婚時には、父母の関係はどうしても険悪になりがちだ。そういう意味では、面会交流は子どもと別居親の絆をつなげる役目を果たしていると言っていいだろう。ただ、課題もある。

原則として実施ですから、中学生以上だと意思は尊重されますが、小学生以下の場合は、ちょっとやそっとの拒否なら、『子どもが嫌がっても歯医者に連れていく』のと同じ論理で、裁判所は会わせようとします」と、家事事件に詳しい岡村晴美弁護士は語る。

 そのため、別居親に会いたがらない子どもには根掘り葉掘り拒否の理由を尋ねて、「どういう条件であれば会ってもいいか」と面会を誘導しようとする調査官も少なくない。

“いつなら会ってもいい?”と聞く調査官に、“100年後なら会ってもいい”と子どもが答えたところ、『可能性がある』と調査報告書に書かれたこともあります

 2017年、父親との面会交流を嫌がる子どものために、母親が親類から借金をしてまで計172万円もの間接強制金(面会を拒むごとに別居親に一定額の罰金を払うこと)を支払い続けたものの、結局子どもがストレスで心身に不調を来すまでになったという案件をきっかけに、多少緩和されてはきているという。

 あるとき、岡村弁護士は面会交流を数年間サポートしてきた小学生の母親から、「娘が、“もうやめたい”と言っている」という連絡を受けた。

「どうして嫌になっちゃったのかな?」という岡村弁護士の問いに、女児は驚きながら答えた。

最初から嫌だと言いました。でも岡村先生が、“頑張れるよ”と言ったし、面会にもついて来てくれたから頑張ったけれども、やっぱり生理的に無理。手を恋人つなぎにされたときに、背筋がぞわっとした

 岡村弁護士はそのときまで、親子の縁が切れるよりは細い糸でもつながっていたほうがいいと思っていた。

でも、かえって、その子を苦しめていたのだと思い知らされました

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