子どもが別居親に会いたがらないのは同居親のせいではない

 別居親は、子どもが拒否的な態度をとると、「一緒に住んでいたときには仲がよかったのに」と、同居親の刷り込みのせいだと考えがちだ。しかし、昨年6月、一般社団法人日本乳幼児精神保健学会が出した「離婚後の子どもの養育の在り方についての声明」では、「そのほとんどは子どもの主体的な意思に基づいており、子どもなりの理由や根拠がある」と述べている。例えば、同居中に別居親が威圧的だった記憶が焼きつき、心の傷を抱えている場合がある。会いたくないのに面会を強いられることで、大人や社会に対して不信感を募らせるリスクもあるという。

 私自身、DV夫であった父親に嫌悪感を持っていた子どもだった。酒を飲むと、母を目の前に座らせ、理不尽な言いがかりで何時間も責め続ける。子煩悩な父であったため自分に害が及ばないことはわかっていても、眉間に皺を寄せた般若のような顔と、口汚い怒鳴り声に私は震え上がった。そして、母がかわいそうで仕方がなかった。平静時の父が、「さあ、おいで」と手を広げたとき、まだ幼稚園児だった私は機嫌を損ねてはいけないという義務感だけで、渋々、父の膝に突進していったことをよく覚えている。

 もちろん、夫婦仲の悪い家庭に育ったからといって、だれもが親を嫌いになるわけではない。ただ、近年、「毒親」「親ガチャ」という言葉が出現するようになったのも、親との関係に苦しむ子どもが存在することを示していると思う。

 法務省が一昨年に公表した「未成年時に親の別居・離婚を経験した子に対する調査」によると、「父母の別居の直後、別居親とどのくらいの頻度で会いたいと思っていたか」の問いに、「あまり会いたいと思わなかった」12.1%、「まったく会いたくなかった」20.1%を合わせると、32.2%の子どもが別居親と会いたくなかったということになる。

 そのうち、「会いたいと思わなかった理由は」という問いには、「嫌いだった」38.8%が最も多かった(複数回答)。さらには、別居直後に「連絡を取りたくなかった」子どもは28.4%だったのに対し、別居後2~3年時点では29.4%の微増で、それほど同居親の影響を受けていないことがわかる。