──それでも3割は失敗するんですね……。では、IPを使わない場合にすべきことはありますか?

「まず、既存のIPを活用したアプリゲームの成功率を7割としましたが、新規IPのアプリゲームになると“まともにかっちり開発したゲーム”でも、成功率は私の体感値として3割に下がります。そのような中で、特に重要なのはキャラクターの浸透です。日本人はキャラクター文化が根強く、キャラクターが欲しいからガチャを回すことに慣れており、ガチャに対する敷居も低いです」

──オリジナルIPでキャラクターに興味を持ってもらうには、知名度のあるイラストレーターや声優の起用も重要ですよね。

「イラスト、ボイスはもちろん、キャラクターがどんなストーリーでゲーム中に登場するかというキャラクター設定、キャラクタートレンドも考える必要がありますね。

 例えば、『新世紀エヴァンゲリオン』(テレビ東京系)が流行ったときは、綾波レイの成功例をもって、水色髪のクール系のキャラが他作品でもどんどん使われていきました。最近だとアニメ『リコリスリコイル』(TOKYO MXほか)の錦木千束のように、”天然で超明るいキャラクターだけど、実は業を背負っている”みたいなものが流行ったり、キャラクターひとつとってもトレンドや他作品への派生が起こりえます。そういったさまざまな要素をかけ合わせて、オリジナルIPでのキャラクターの浸透を図ることが必要です。それは別次元の難しさがあります。

 そうした中、2021年に『ウマ娘』(Cygames)がリリースされたことは希望につながりました。'12年には『パズル&ドラゴンズ』(ガンホー)、'13年には『モンスターストライク』(mixi)、'15年には『Fate/Grand Order』(アニプレックス)と、ヒットコンテンツが続々と生まれましたが、その後は“中国や韓国のアプリゲームのほうがおもしろい”という時期がありました。

 しかし、『ウマ娘』がリリースされ、約7か月で1000万ダウンロードを突破した。運営元は過去最高益を更新し、“日本でもまだすごいコンテンツが作れるんだ!”という勇気をもらいました。今後も日本でヒットコンテンツが生まれる可能性はあると感じています」

中山淳雄さん著作・『エンタメビジネス全史』(日経BP社刊)

(取材・文/阿部 裕華、編集/FM中西)