ドラマと主題歌の世界観が一致した『カムカムエヴリバディ』
なぜ、私は「アイラブユー」に惹かれるのか。考えると、SNSに行き着く。みんなが自分の「成功体験」を披露し合う時代に、落ち葉と猫と話している。「ささやか」という言葉が浮かび、私が聞きたいのは、ささやかな人のささやかな声なんだと気づいた。
そしてこの世界観は、『舞いあがれ!』に重なった。制作順序からいうなら、『舞いあがれ!』の世界観がきちんと主題歌に反映されている、というのが正しいのだろう。とにかく両者の世界観が一致していることが、子役時代からはっきり見えた。小学生の舞(浅田芭路)は身体が弱く口数少なめ。本好きの貴司(齋藤絢永)も生きづらそうな子どもで、久留美(大野さき)は職業の定まらない父と二人暮らし。「真ん中」にいない感じの3人が仲良くなっていく様子がとてもよかった。
そしてこのところ思っていたのが、ドラマの世界観と主題歌の世界観が一致するとき、そのドラマは名作になるということだ。『カムカムエヴリバディ』が大きかった。
主題歌『アルデバラン』は、「♪君とわたーしは、仲ー良くなれーるかな、この世界が、終わるそのまーえに」と始まった。「世界=終わる」という認識に立っていて面食らったが、その厳しさがドラマの空気に合っていた。数々の伏線が最後の「和解」に結びついた展開で、主題歌も伏線のひとつではと思うほどだった。これぞ名曲&名作で、『舞いあがれ!』もこの系譜に連なってほしいのだが、最終週を前に雲行きが少し怪しい。