つらかった『劇団健康』時代、手塚とおるとのエチュードでスランプから脱却

──長く女優を続ける中で、特につらかった時期はありましたか?

「もう30年ほど前ですが、『劇団健康』にいた時代ですね。私の芝居の感覚とか、面白いと思うことって、ホースに例えるとすごく細かったと思うんです。でもケラさんや、その周りにいた犬山さん、手塚(とおる)さんに、無理やりガーッて広げられた気がするんですよ。最初のうちは、みんなが面白いって感じるようなことが絶対にできず、“こいつはつまらない”って思われていることに気づいていた。求められることに応えられないし、認めてもらえないことを稽古場で毎日実感して、いちばんしんどかったですね。“私、あのときなんで辞めなかったんだろう”って思うくらい。特に、若い団員が入ってきて、その子たちのほうが面白かったりすると、“はぁ~(ため息)”って思いっきり落ち込んでいましたね」

──どのようにスランプを乗り越えたのですか?

「手塚さんと、稽古場でエチュード(即興劇)の相手役として組ませてもらったんです。手塚さんは、こちらのセリフや動作を拾ってツッコむのがすごく上手で、一緒に演じていて本当に楽しくて。もう、ずっとそのエチュードをやっていたいくらいでした。それを見たケラさんが“リエちゃん、ボケ役をやるのが似合いそうだね”と言って、『予定外』('93年上演『NYLON100℃ 1st SESSION インタラクティブテクノ活劇 予定外』)でそういう役を書いてくれたんです」

──手塚さんとの共演で、峯村さんの本来の魅力が引き出されたのですね。

「手塚さんとのエチュードで、あんなに苦労した“面白いこと”が簡単にできた。“これか! みんなが面白いと思っていることは!”とやっと気づけて、道が開けたんです。そう思うと、手塚さんが人生のキーパーソンみたいな感じですね」

表情にもさまざまなバリエーションが。手塚さん、峯村さんを導いてくれてありがとうございます! 撮影/矢島泰輔

“芝居を押し出しすぎない女優”が好き。大事にしている言葉とは?

──峯村さんは、映画『ふがいない僕は空を見た』('12年、タナダユキ監督)でのネグレクトの母親役や、ドラマ『あなたの番です』('19年、日本テレビ系)のシュールな住人役など、出演シーンは短くとも、印象に残る役を数多く演じています。そのような深みのある人物を、どうやって演じられるようになったのですか?

「もしかしたら、いろいろな現場で多くの女優さんを見てきたことが影響しているかもしれません。私が好きな女優さんって、自分のお芝居が前面に出すぎていない人たちなんです。だから共演したときに、“いいな”って思うところをマネしたいなと思って、観察していました。でも……やっぱり、なんでしょうね~。この年齢になって、少しは深みが増したのかも(笑)

──最近は、演劇よりもYouTubeのような映像で表現をする人が増えてきています。そのような風潮をどう感じていますか?

「今はYouTubeなどで簡単に表現する方法があるけれど、それに世間が飽きてきたら、まただんだんと舞台のほうに関心が戻ってくるんじゃないかって思いますね」

──最後に、ご自身の生き方に影響を与えた言葉や、大事にしている考え方はありますか?

「劇団健康時代に、客演で出てくださった秋山菜津子さんがおっしゃった、“腐ったら負けよね”っていう言葉なんですけれど。誰でも、腐りたくなるときが多々ありますよね。私なんて、演劇とか好きなことをしていても、“あ〜、もういいや”ってなるときもあるんですよ。でも、そのままでいたら、もうすべてが終わってしまう。そこから“よいしょ!”と奮起して頑張ることが大切だなと思って、秋山さんの言葉を常に自分に言い聞かせています

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 ドラマなどで演じている、ときに少しとっつきにくい役柄とは違い、コミカルに優しい口調で語ってくれた峯村さん。年齢を重ねながら、さまざまな演技に挑戦し続ける姿勢に、観ているほうも勇気づけられます。これからもいろいろな作品で活躍されていくのが楽しみです!

『帰ってきたマイ・ブラザー』の稽古に励む峯村さん。今後の活動からも目が離せません! 撮影/矢島泰輔

(取材・文/池守りぜね)


【PROFILE】
峯村リエ(みねむら・りえ) ◎1964年、東京都生まれ。身長173センチ。『ナイロン100℃』所属。数々の舞台・ドラマ・映画に出演を続ける。'16年以降の出演作に、映画『あなたの番です 劇場版』『犬も食わねどチャーリーは笑う』、大河ドラマ『真田丸』『青天を衝け』、連続テレビ小説『エール』、テレビドラマ『あなたの番です』(日本テレビ系)、『最愛』(TBS系)、『漂着者』(テレビ朝日系)、舞台『ザ・ウェルキン』など。'23年4月からはテレビ朝日系『ケイジとケンジ、時々ハンジ。』、舞台『帰ってきたマイ・ブラザー』、7月~8月は舞台『ピエタ』に出演。

シス・カンパニー公演『帰ってきたマイ・ブラザー』

作:マギー/演出:小林顕作
出演:水谷豊/段田安則/高橋克実/堤真一/池谷のぶえ/峯村リエ/寺脇康文

【東京公演】2022年4月1日(土)~4月23日(日) @世田谷パブリックシアター
※東京公演後、名古屋、大阪、福岡、西宮、新潟、札幌、仙台、京都と各地で上演

《ライブ配信決定》4月15日(土)にライブ配信を実施! 詳細は公式サイト(https://www.siscompany.com/brother/)をご覧ください