──虚構新聞がネットリテラシーの文脈で見られていることについてはどうお考えでしょうか。

「嫌な気持ちになるとかはなくて“そういう見方もあるんだなぁ”と思いますね。メディア芸術祭で受賞したときもそうですが、人によって虚構新聞のとらえられ方が違うので、おもしろいと思っています」

「たかがインターネット」という感覚がリテラシーを高める

──ちなみに立ち上げ当時「読者からフェイクニュースと勘違いされるかもしれない」というリスクは想像していたんですか?

「いえ、本文を読めばオチがついているので、そこで気づいてもらえるだろうと。それにそもそも媒体名が『虚構新聞』ですし

 ただ開設当初、虚構新聞の見出しだけをコピペして別のニュースサイトに転載されることがあったんですよ。それだと見出ししか載らないので、さすがに事実のニュースと混同される可能性があると思いました。

 だから見出しの隣に、白の背景に白文字で“これは嘘ニュースです”と書いているんです。これなら見出しをコピペしたときに気づけるので」

実は見出しだけコピーされることを防ぐ工夫がある

──え~、これは知らなかったです。リアリティを保ちつつも勘違いを避けるための工夫ですね。

「勘違いという意味では、立ち上げ当時から、悪い意味でのフェイクニュースサイトも技術的には可能だろうなとは思っていました。ただ、読者を楽しませる以外の動機が思い浮かばなかったので、そんなサイトを手間暇かけてつくる意味はないだろうと思っていたんですよね。

 でもその後、ネットに広告収入の仕組みが入ってきて、アクセス数と収益が結びつくようになりました。そこでフェイクニュースをつくる動機が生まれたのかな、と」