古くならず、時代に合わせて進化するコンテンツに

──虚構新聞自体のテイストは時代に合わせて変わっていっているんですか?

「そうですね。基本的には変えていないのですが、だんだんとブラックユーモアは少なくしています

──書籍化された『虚構新聞 全国版』で下のほうに「訃報」の欄があったりしましたよね。めっちゃ笑いました。ドラゴンボールのヤムチャが亡くなっていたりして(笑)。

「そうですね。訃報は実際の新聞に寄せてつくったパーツで、個人的にも考えていて好きだったんですが、最近はたとえネタでも“人が亡くなる話”自体がネガティブに受け取られて、あまり楽しまれないんじゃないかなと

──ファンとしては変わらずやってほしいところもあります(笑)。

「いや、それだと老害化しちゃうと思うんですよね。昔から読んでくださる同世代は楽しんでくれるでしょうけど、自分より若い世代の価値観とはどんどん離れていってしまう。

 さっきのヤムチャの訃報も世代的には受けるんでしょうけど、リアルタイムでドラゴンボールを知らない若い世代は、そこに“加齢臭”をかぎとってしまうかもしれない。長く愛していただくためにも、時代に合わせて求められていることは見定めています」

──なるほど。前編で「共感されるコンテンツづくり」のお話がありましたが、常に読者を意識してつくっているのを感じます。その姿勢こそが長く愛される根本的な要因というか、とても素敵だなぁ、と。

「そうですね。始めた当初から“読者とのキャッチボールが大事”という考え方は変わっていません。特に虚構新聞は基本ボケっぱなしで、読者の方にツッコんでもらって、初めて笑いになると思うので(笑)

──そうですよね。私自身、友達と爆笑しながら「いや何言ってんねん」「そんなわけないやん」と連発していた記憶があります。

「いまでも高校生の方から、メールで感想をもらうことがあるんですが、その返信で“大丈夫?  記事から加齢臭してない?”って聞くんですよ。幸い、まだ若い子の感覚についていけてるようで安心しました(笑)。

 19年前から今まで“読者の方に笑ってほしい”と思いながら記事をつくってきました。今後もマイペースに更新していきますので、ツッコミながら気軽に楽しんでほしいですね」

ニュースを軽やかに笑いに変える虚構の力

 受験勉強中の高校3年生のとき、虚構新聞を初めて読んだ。「円周率ついに割り切れる」という記事で、当時「え、マジで? 3.14はどうすんのコレ」と衝撃を受けたが、すぐにフィクションと知って爆笑したのを覚えている。

 それからシャーペンはマウスに、筆算は右クリックに。友人宅で虚構新聞を読みふけるようになり、がっつり志望校に落ちた。しかし引き換えに暗いニュースも明るく笑い飛ばす楽観的な力を得た

 政治への不満も、社会への違和感も、虚構新聞の前ではすべて"フリ"だ。記事で高度なボケに昇華してくれて、読者のわれわれが「いや、ありそうやけど!」と笑いながらツッコむ。その、たった5分でもうイライラは消えてなくなる。

 UKさん自身「存在意義がわからないと言われると反論できない」とおっしゃっていたが、きっと虚構新聞に存在意義なんて必要ない。何でもかんでも存在意義が必要なユーモアのない社会はどうにも生きにくいに違いない。虚構新聞のような重いニュースを軽やかな笑いに変えるコンテンツが更新され続ける限り、世の中はきっと平和なのである。

(取材・文/ジュウ・ショ、編集/FM中西)