──え~、知らなかったです。沼口さんとしては、当時から巨大な魚に対する魅力を感じていたんですか。サイズ感としてはサメと共通するものがありそうです。
「そうですね、当時はサイズの大きさに魅力を感じたんだと思います。育てる際のハードルが高いほど楽しい、という感覚もあったと思います。
でもすごくいい店員さんで、そうならないように私にピラルクを売ってくれなかったんですよ。それで悩んだ結果、池袋でピラニア・ナッテリーの赤ちゃんを買いました。350円くらいだから中学生でも買えたし、水質にもあまり敏感ではなく、成長しても30センチくらいにしかならないことが初心者向きだと思って」
──ピラニア! 一般には人を食べるイメージがあって、ちょっと怖いかも……。
「そうですよね。でもピラニアっておもしろくてすごく臆病なんですよ。エサ用のメダカや金魚を与えても、私が近くにいると絶対に食べない。そんな姿も含めて、飼っていておもしろかったですね。
結果、8年間ほど生きてくれたので、長期飼育は成功でした。中学時代はピラニアに全力を投じていたかもしれない(笑)」
――沼口さんとしては、当時から巨大な魚に対する魅力を感じていたんですね。サイズ感としてはサメと共通するものがありそうです。
人間関係に悩み、生き物を愛(め)で続けた幼少期
──生き物を飼うおもしろさについては友達と共有していたんですか?
「それが、小・中と学校で友達ができなかったんですよね。人間関係にはずっと悩んでいました。だから生き物を飼うのは自分だけの楽しみでした。ひとり遊びのプロというか(笑)」
──「ひとりで楽しめる強さを得た」ともいえますね。ちなみに生き物以外にハマっていたことはあるんですか?
「いえ、習い事もしていたんですけど、夢中にはなれなかったです。ただ友達が欲しくて自分で見つけた新聞広告の劇団オーディションを受けて、テレビのエキストラの仕事をやっていたことはありました」
──え! そうなんですね。びっくりです!
「例えば学園ものの現場って、カメラが回っていなくても演者のみなさんが仲良しのクラスメイトという雰囲気なんですよ。それを横目に、私もこんな学園生活を送れたらどんなに楽しかっただんろうと脳内でひとり楽しんでいました(笑)」
──(笑)。
「あとは、同じ劇団で馬に乗って時代劇に出ている男子がいて、それがうらやましくて乗馬を始めたこともありました」
──そこでも「乗馬」という動物関連のほうに興味があったのがいいですね。
「そこはブレなかったですね。馬は大きくて魅力的な生き物で。それから高校1年生のとき“アフリカのライオンの写真を撮りたい”と思って親にチケットを買ってもらい、ひとりでジンバブエに行ったこともありました」
──それもすごい経験ですね。高校生でそんなサバイバルな空間に……。
「そうですよね。アフリカの広大な土地で過ごしたら“人間関係で悩むのなんてばかばかしいな”と思えたんですよ。“同じクラスの子なんて、家が近所で偶然会った人ってだけじゃん”って。当時の私は、学校が全世界だと思っているくらい狭い世界で生きていたので、気持ちがすごく軽くなりました。
その結果、人間関係の悩みが解消されて“高校生からはどんどん飛び込んでいこう”って。それで高校で生徒会長になったんですよ」
──それまた、すごい行動力ですね(笑)。ピラニア、馬、ライオンといった生き物が人生の転機になっていたんですね。
「誰もやらない"隙間のポジション"に入るのがうまいんだと思います。生徒会長とか誰もやりたくないじゃないですか(笑)。
生徒会長になったら、何をするにも私の許可がいるので、自然と会話が生まれて友達もできていきました。思えば、このときにも動物がきっかけで悩みが解消されたんですよね」