アメリカからの帰国後、苦労した「言葉の壁」

石橋静河さん 撮影/松島豊

──石橋さんからは「自分の言葉できちんと話す人」という感じがします。それは、海外留学をした影響もあるのでしょうか?

「15歳で留学したときは英語も話せない状態でしたが、アメリカは自分の意見を伝えるのが大切な国で、言わないと置いていかれてしまうと学び、鍛え上げられました。

 でも、日本に帰ってきたときに同じように表現しようとしたら、相手には強く聞こえてしまうことがあって戸惑いもありました。

 そのとき、“日本語って、すごく難しい!”と思ったのですが、言葉を上手に使っている人の伝え方を学んだり、日記帳に自分の思いを書き出して、言葉にする方法を考えたりしました

──その作業をしていくうちに、何か発見はありました?

「最初は、“私はこう思う。なぜなら、こうだから”と、英語のように言ったほうがわかりやすいでしょ? と思っていたんです。

 ただ、日本語もいい面はたくさんあるんですよね。曖昧(あいまい)であったり、遠回しだったりはするのですが、日本の文化の面白さを知っていくにつれて、そういう文化から生まれてきた言葉を、自分はどうやったら使えるようになるのか、ということを考えるようになりました」

──お忙しいと思うのですが、「自己を見失わないためにやっていること」はありますか?

「いろいろな人に会って、たくさん影響を受ける仕事ではありますが、1日の仕事が終わった時は、自分の中から流して、リセットしています。“自分と向き合うこと”“自分の軸に戻ってくること”は意図的にしていかないといけないので、気をつけています

 また、小さなノートを持ち歩いていて、気になることがあったときやモヤモヤしたことがあったときに思いを書き出すようにしています

 日本では、“言葉にしてはいけないこと”があると感じています。でも、“自分がそう思った”ということはきちんと認めてあげないと、人の気持ちも受け入れられなくなってしまうので、受け止めています」

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 書くことで、自分を俯瞰(ふかん)できるところもありますよね。お話を伺っていても、“(自分の内側から)自己ときちんと向き合っている視点”と“(自分の外側から)自己を客観視する視点”の両方を持っているのを感じます。