インタビュー相手の懐に入る覚悟とリスク

──吉田さんにお聞きしたいのですが、真樹日佐夫さん(漫画原作者)や百瀬博教さん(格闘技プロデューサー)などいろいろな逸話がある方にお会いするのは緊張しませんでしたか?

吉田:百瀬さんは、『PRIDE』の怪人と呼ばれたアウトローの人で、拳銃の不法所持で捕まったこともある本当に怖い人。ボクは近づかないようにしていたけれど、一度逃げられない感じで取材を組まれたことがあって。取材が決まった以上は、相手の懐に飛び込む。百瀬さんが力道山のコレクターだと知っていたから、ボクのコレクションをいくつか持って行った。そうしたら一発で気に入られて、「『PRIDE』の会場にガールフレンド何人でも連れてこい。俺が入れてやる」って(笑)。

──取材した相手から、そこまで気に入られるのは豪さんの人柄だと思います。

吉田:でも、当時ボクはプロレス雑誌の人間だから最初からPRIDEには入り放題だったんですよ。さらには10万円渡されて「(ヤフオクで)俺のぶんも落札しろ」って言われたり(笑)。あるとき、「今から服買いに行くからついて来い」って言われて。百瀬さんって180センチあってデカいんですよ。店ですごく長い黒のコートを出してもらった後に、「それ吉田にやる」って。サイズが全然合ってないし、足首ぐらいしか出ないから完全に変質者。百瀬さんがいないときにサイズを変えてもらったら、「お前、何変えてんだー! 」って(笑)。

──『hon-nin』(太田出版)でインタビューした荻野目慶子さんからは、直筆の手紙をもらったと聞きますが……。

吉田:あ~手紙もらいましたね。梅干しも。ボクは礼状を出すという常識が欠けているので、関係性はすぐ終わりますけれど(笑)。それこそ、『電池以下』でもインタビューした木村一八さんからは、お父さん(横山やすしさん)の服をいただいたりもしましたよ。

──先ほど、相手の懐に入るとおっしゃっていましたが、吉田さんのようなインタビュー能力はどのようにすれば身につきますか?

吉田:「プロインタビュアー教室」に通えばいいんですよ。

:吉田豪じゃないほうの(笑)。

吉田でも、相手が心を開いて話してくれるのって、いいことばかりではないんですよ。開かせすぎて、相手が濃い関係を望んでくることも多々あるので。

:満遍なく面白いことに向き合っていたいのに、余計な時間取られちゃうし。

吉田:友達になってくれって言われても、ボクは別になりたくないんですよ。氏神(一番)さんに「友達になってほしいでござる」とか、そんなこと言われても困るから渡された連絡先を捨てたこともありました(笑)。

──相手の心を開かせるようなインタビューをするには、覚悟が必要なのですね。

吉田:でも本当、リスクがないところにビジネスチャンスはないというか。やっかいな人に気に入られるリスクを背負って仕事をしているわけなんです。それくらい(相手の懐に)飛び込んでいるので。

吉田豪さん 撮影/山田智絵

大物歌手から「あなたたち、スカル好き?」

──インタビューした美川憲一さん(『電池以下 掟ポルシェ編』に収録)からも、プレゼントをいただいたとか。

俺、美川さんの歌もファッションセンスも好きなんですよ。インスタグラムをフォローしていると、普段のファッションも見られるんですけど、ロックスターみたいなセンスで素敵で。取材したときもでっかい蜘蛛の指輪をつけていたので、「カッコいいですね」と言ったら、「こういうちょっと気味悪がられるものも好きなのよ。だったらあなたたち、スカルも好き?」って聞かれたんです。

吉田:人生で初めて聞かれたよね(笑)。「あなたたちもスカル好きでしょ~」って。

「私、スカルをコレクションしているのよ」って言われて。東南アジアで土産物として骸骨型の灰皿を売ってるんだけど、それが好きで美川さん何個も家にあるからって、俺と豪ちゃんに一個ずつ持たせてくれて(笑)。「美川憲一からもらったスカル」って、字面だけでもパワーありすぎでしょ。

吉田:クッキーの詰め合わせとマスクのケースももらったね。

──そこまで相手から気に入られるのは、普通ではなかなかありえないと思いますが。

:たまたま趣味が合ったんでしょうね。俺もポジティブパンクとか薄気味悪いものに惹かれるんでスカルも大好き! でも趣味が合わない人からも気に入られるのが吉田豪なんですよ。

──取材の場合は、相手に聞いてみたいことが事務所からNGと言われたりもします。その場合はどうされていますか?

吉田美川さんの場合も、事務所からNGと言われていた話があったけど、本人は「私は話していいんだけれど、聞かれないのよ」って。NG話をたっぷり話してくれたけれど、その結果全部カットだった(笑)。

──「電池以下」の連載で、これまで取材拒否や、ひどい目に遭ったことはなかったですか?

:ドタキャンされたりとか、ややこしいことになったりは年に1度くらいはあったけれど。だんだんわれわれの嗅覚もよくなったのか、最近はそういうこともなくなってきましたね。今は何が地雷なのか爆発させないでふんわり踏めるようになったんじゃないかな。

  ◇   ◇   ◇  

 ふざけているようで、仕事に対しては確信をついたことを話すおふたり。後編では、豪さんの学生時代の卒業制作や、掟さんの結婚相談所事業についてもお聞きしました。

(取材・文/池守りぜね)

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〈PROFILE〉
吉田豪 (よしだ・ごう)
1970年、東京都出身。プロ書評家、プロインタビュアー、ライター。徹底した事前調査をもとにしたインタビューに定評があり、明石家さんま、矢沢永吉、秋元康、羽海野チカなど数多くの著名人より厚い信頼を受けている。主な著書に『男気万字固め』(幻冬舎)、『人間コク宝』シリーズ(コアマガジン)、『サブカル・スーパースター鬱伝』(徳間書店)、『書評の正座』(ホーム社)など。

掟ポルシェ (おきて・ぽるしぇ)
1968年、北海道出身。ニューウェイヴ・バンド「ロマンポルシェ。」ボーカル&説教担当。ほかにも執筆、俳優、声優、DJなど幅広いジャンルで活躍中。主な著書に『説教番長・どなりつけハンター』(文藝春秋)、『男道コーチ屋稼業』(マガジンファイブ)、『男の!ヤバすぎバイト列伝』(リットーミュージック)、『豪傑っぽいの好き』(ガイドワークス)、『食尽族〜読んで味わうグルメコラム集〜』(リットーミュージック)、『掟ポルシェのくだらないやつ』(東京ニュース通信社)など。