──エンドロールの前に、マリさんの名前がクレジットされていますね。
「最初から名前は入れようって思っていた。エンディング曲も、スタッフと相談してアナーキーの『心の銃』にしました。あの演奏は、実際のライブのアンコールを録ったもの。エキストラとか、クラウドファンディングとかでもファンが映画を盛り上げてくれていて、ありがたいことだよね」
──映画のタイトルの『GOLDFISH』に込められた意味を教えてください。
「ゴールドフィッシュって金魚のことだけど、金魚って煮ても焼いても食えない。観賞用として作られたわけじゃないですか。だから観てもらえないと何の価値もない。それってエンターテイメントの世界と同じ。金魚の存在とアナーキーというバンド、そしてマリをリンクさせたらどうだろうってところから思いつきました。ロックスターでもアイドルでも、金魚(観賞用)になった途端に死に走ったり、様式美に煮詰まってクスリにハマったりする。そういう話って昔から多いじゃないですか。そういった内面的なものをテーマにしようと考えたんです」
「バンドつぶし」にライブ中に殴られたり石を投げつけられた
──インタビュー前編で「昔、バンドマンに殴られた人はこの映画を観ないかもしれない」と冗談交じりにおっしゃっていましたが、当時はそういったことが本当にあったのですか?
「“何をやってもいいんだ”って思っていたダメ人間が、バンドマンにいっぱいいたんでしょうね。“ライブハウスだったら好きなことをやってもOKだろう”みたいな感じで、暴れていた。俺らが出てきたころにはモッシュ(ライブ中に客同士で身体をぶつけ合う行為)とかなくて、『バンドつぶし』っていうのがあってね」
──「バンドつぶし」ですか!?
「お客がステージに立っている演奏者を引きずり下ろして、殴って楽器を取り上げる」
──そんなことが実際にあったんですか?
「そう。それで奪った楽器を演奏する。それが日常茶飯事だからね。観に来てるヤツはファンとかいうレベルじゃない。ライブハウスでは暴れてもいいっていうのが暗黙の了解になっていたんじゃないかな。アナーキーのアンチからは、ステージにビンも投げられた。上と下でケンカになったりとかね」
──ステージに出るのが嫌になりませんでしたか?
「もう音楽じゃないよね……。アナーキーはコンテストに出てすぐデビューしたから、ムカついたヤツがいっぱいいたんだと思うよ。“そんなのパンクじゃねえ”って。それでもう石を投げられたり、“アチーっ!”って思ったら、服の中に爆竹が入ってパーンって爆発していたり(笑)」
──……(絶句)。
「でもこういうもんなんだろうなって思うしかなかった。道徳的なことを言ったところで通じるわけではない。みんな現状から抜け出せなくてモヤモヤしている連中が、論理的じゃない方法でバーッて暴れているだけだからね」