子どもたちへ向けた講演会活動を始めた
──子どもたちには、どんなことを、どのように話されるんですか?
「学校の体育館にスピーカーを持ち込んで、途中歌をはさみながら、子どもたちに自分の生き方や考え方を伝えています。他の人から見れば、僕は変わった生き方をしていると思うんです。
実際、歌手になったときも、“なんで、39歳で歌手になりたいと思ったんですか”とか“子どもが4人もいたら、歌手になりたいなんて考えないんじゃないか”とか、いろいろなことを言われました……。
大人たちも、僕の生き方をわかっていないように、子どもたちも“大人になる”ことのイメージが、あまりついていないように思います。
身近にいる大人だけでは、サンプルも限られますし、いつも親は仕事で忙しく、休日は疲れてぐったりしている。そんなイメージも強いと思います。それだと、子どもたちも大人になるのが楽しくないと思います。
僕のように歌を歌いたいという人がいてもいいし、サッカーをやりたいという人がいてもいい。それで、自分のこれまでの人生を、子どもたちの目を見て、自分の言葉で伝えていく。こんな“ひとりの大人がいるよ”というサンプルを子どもに伝えていくべきだと思って、活動しています」
──この活動をやろうとした、きっかけはあったんですか?
「デビューした直後に、長男の通っていた中学校の先生が“なぜ歌手になったのかや、病気になってどんな思いをしたのかを、子どもたちの前で話してくれませんか”と、学校に呼んでくれたんです。
最初は迷いました。中学時代って、何に対してもムカついている時期だから、こんなオジサンが話しても聞いてくれるか不安だったんです。でも、せっかくの機会だし、やってみるかと腹をくくって、話しに行きました。
そのときは、これまでの僕の人生を歌で構成しました。初めて買った松山千春のLPレコードの話から、病気のときに聞いた歌、人生の転機となった歌など、僕のこれまでを振り返りながら、1曲ずつ歌っていったんです。最後には、女子生徒のピアノの演奏で『home』を歌いました。
そしたら、みんな最後まで真剣に聞いてくれたんです。後日感想も書いてくれて、いまも僕の宝物として持っています。すごく熱い思いをつづってくれて、これを見て“大人が真剣に話せば、子どもたちはちゃんと聞いてくれるんだ”と、歌だけではなく、話すことにも意味があるんだと思うようになりました」