36歳でがんを患い出世コースから外れることに愕然とした

「サラリーマン時代は、いまと違って“勝ち続けなければいけない”と思っていました。立場上、人に謝ることが多かったですけど、“人生は頑張れば勝ち続けられる。でも一度負けたら、そこで終わってしまう”と、ずっと思っていたんです。

 そんな中、36歳でがんになって、そのときは、“もうこれで終わりだ”と思いました。

 当時は、“がんになったら本流(出世コース)から外されてしまう。だから、がんのことを上司や人事に言えない”と思っていたし、そう考える人も多かったと思います。

 いまは2人に1人ががんになる時代です。会社も治療しながら働き続けられる制度を整え始めましたけど、当時はそんなに環境が整っていませんでした。

“あんなに頑張っていたのに、これで出世コースから外れていくんだ”と思って。それが悔しかったので、がんになったことをきっかけに、それまでやれなかったことやろうと。それが、僕にとっては歌だったんです。

 それで頑張って歌手になることができた。人生って、何が起こるかわかりません。コロナになったときも“終わった”と、本気で思いました。“全部またリセットだ”って。

 でも、さっきお話ししたように、考え方を切り替えて、独立して、歌手活動一本にしぼって、前に進み始めたんだから、できるところまでとりあえずやってみて、それで無理だったら考えようと思ったら、意外といろんな人が助けてくれたんです。大変でしたけど、いま思えばすごく楽しかったですね。

 こうした経験から学んだことを、いまはお子さんだけでなく、お子さんを持つ若い親御さんにも伝えています。そこでのメッセージは “諦めたらダメだということ”“負けていいので、一生懸命頑張ること”“転んでも、自分の頭で考えて立ち上がる、そんな子どもを育ててほしい”。

 そのためには、大人が何度転んでも、立ち上がり続ける背中を見せる必要があると思っていて、僕は実体験をもとに、いろんな場所でその話をしています。おかげさまで、共感してくださる人も増え、全国で呼んでもらえるようになりました」

 次回は、自分の夢をかなえるための考え方や行動について、お聞きします。

木山裕策さん 撮影/曳野若菜

(取材・文/西谷忠和、編集/本間美帆)


【PROFILE】
木山裕策(きやま・ゆうさく) 1968年生まれ、大阪府出身。2007年『歌スタ!!』(日テレ系)出演をきっかけにデビュー。翌年『home』でメジャーデビューを果たし、同年の『NHK紅白歌合戦』に出演。以降、歌手活動を中心に躍進し、2019年に独立。近年では歌手活動の他、学生・管理職向けの講演活動に加え、『千鳥の鬼レンチャン』(フジテレビ系)への出演が話題になるなど、多方面で活躍している。YouTuber→@user-yb7tq1cx3n、Instagram→@kiyamayusaku