テレビドラマが再び熱い時代を迎えている

──すごくワクワクします。

「この年にしてまた楽しくなってきたんですよ。もっともっとドラマを作りたいと思っています。僕だけじゃなくて、いま、テレビドラマ全体がまた面白くなってきていると思うんです。

『silent』が最近のドラマの流れを変えた、みたいな角度で取材していただくことも多いですけど、僕はそんなふうには思っていなくて。あのクールには渡辺あやさん(脚本家)の『エルピス —希望、あるいは災い— 』(カンテレ制作・フジテレビ系)もあったし、三谷幸喜さんのNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』も素晴らしかった。

 ドラマプロデューサーの大先輩である大多亮さん(※9)がよく言うんですけど、ドラマにいちばん大事なことは多様性。要はいろんなドラマがあることだって。たしかに、連続ドラマのよさって、ワンクールにこんなにいっぱい作品がある、“ドラマ”っていう棚にいろんなジャンルがあって、それを自由に選べる楽しさだと思うんです。

 お客さんが自由に選べるんだから、それぞれのプロデューサーが自分の好きなものを作ったら、それだけ色が分かれて、選択肢が増える。そうなったら、お客さんもいろいろ楽しめるから、とってもいいことなんじゃないかって思ってます。

 僕はこれまでに、かなりいろんな種類のドラマを作ってきていて、ひと言で言い表しにくいタイプのプロデューサーだと思うんですけど、僕の中では一貫して、自分なりの自分らしさを出してきているつもりではあります。

 少しおこがましいですけど、そういう、僕の色というか、“村瀬さんのドラマが好き”って言っていただける人がときどきいて、ありがたい限りなんですけど。そういう方が喜んでくれるものをこれからも作っていきたいし、そう言ってくれる人がもっともっと広がっていくように、もっともっと頑張って、もっともっと面白いドラマを作っていかなきゃと思っています」

※9:元ドラマプロデューサー。現在は、フジテレビジョン専務取締役。

村瀬健さん 撮影/松島豊

(取材・文/柚月裕実、編集/本間美帆)


【PROFILE】
村瀬健(むらせ・けん) ◎1973年生まれ、愛知県名古屋市出身。フジテレビジョン所属、編成制作局ドラマ・映画制作センター、部長職ゼネラルプロデューサー。早稲田大学社会科学部卒業後、日本テレビに入社。『終戦60年ドラマ・火垂るの墓』『14才の母』などのヒットドラマを手がけたのちに転職。フジテレビ入社後は『太陽と海の教室』をはじめ『BOSS』『信長協奏曲』『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』を手がける。映画でも『信長協奏曲』『帝一の國』『とんかつDJアゲ太郎』『約束のネバーランド』『キャラクター』などのヒット作品を送り出す。2022年に手がけたドラマ『silent』が大ヒットを飛ばし、累計見逃し配信数で民放歴代最高記録を樹立。バンド「プランクトン」の音楽プロデューサーとしての顔も持つ。Twitter→@sellarm、Instagram→@kenmurase