小学生のころに書いた、“まだ歌手じゃない自分”への疑問

 それに、小中学生のころは授業中に、ノートや教科書の余白にいたずら書きをよくしていました。この前、実家の大掃除をしていたら当時の教科書が出てきて、“私は歌手になるのに、なぜまだ勉強してるんだろう”って書いてあって(笑)。そういう過去の記録を眺めるのもけっこう好きなんですよね。

──初めから、自分の経験を歌詞にして歌うシンガーソングライターを目指していたのですか?

 子どものころは、シンガーソングライターというよりは、歌手になりたい気持ちが大きかったと思います。オリジナル曲を作り始めたころは、正直、(歌詞を書くことに)苦手意識がありましたね。

 というのも、読書があまり得意じゃなくて、難しい言葉とかもうまく使いこなせないんです。ただ、“思いを吐き出す”のはわりと得意なので、自分の中から湧いてきた思いをそのまま歌詞にしていくような感じです。

 あとは、人間観察をして“授業中になんか眠たそうな人は頬づえつくな”とか、そういうことを学生時代もよく書き留めていました。いま思うと、ちっとも授業に集中してなくて、先生に申し訳ないです(苦笑)。

有華さん 撮影/松島豊

ノートを開けば昔の自分が初心に戻してくれる

──このノートを書くとき、有華さんなりのルールや決まりごとはありますか。

 鉛筆などではなく、消えないボールペンで書きます。歌詞は決まるまでに何度も書き直すことが多く、何度も推敲(すいこう)を重ねると、途中で本来歌いたかったことからどんどんズレていくこともあるんです。そんなとき、たとえぐちゃぐちゃに線が引いてあっても消さずに残っていれば初心に帰れるんです。

 夢や目標を書くときは、消せないからこそ苦しいなと感じることもあります。書くためには自分自身とすごく向き合わなきゃならないから重たい気持ちになるし、目標がなかなか達成されないと落ち込んでしまうこともあります。

 ページを見返すと“あ~、病んでるな”みたいな真っ黒いページがあったりして(苦笑)。今日、写真を撮っていただいたページも、いまは自分の中で消化できたから見せられるけど、書いたばかりだったら絶対に見せられなかったでしょうね。

なかなか思うようにうまくいかない日々を振り返る有華さん 撮影/松島豊