ときには辞めようと思ったことも。立ち止まることができた理由

──ノートに思いをぶつけ、ときには歯を食いしばりながら、あきらめずに活動を続けられたのはなぜだと思いますか。

 やっぱり、みんなの前で歌うことが何よりも好きだからです。社会人とシンガーソングライターの二足のわらじをはきながら活動した時期もありますし、ようやく手ごたえを感じたと思ったらコロナ禍でライブができなかったりと、しんどかったことも1度や2度じゃありません。

 結婚して幸せそうな周りの友達を見て、正直、心が揺れたこともありました。でも、そんな私の歌を待っててくださる人がいつも必ずいたんですよね。

 これまでにいただいたファンレターはすべて目を通させていただいていますが、そういう方々の言葉から、私の歌が届いているという実感が持てました。“私ひとりで歌いたいんじゃなく、誰かに歌を届けたいんだ”ってことを、コロナ禍で改めて強く思うようになりました。

 デビューまで10年もかかり、端から見たら遠回りかもしれませんが、去年『Partner』が思いがけずにバズったことも含め、“よいタイミング”という宝くじの一等賞を引いたんだなって。むしろ、10年続けたから、いいタイミングがいま、濃く訪れていると感じますね。

──1994年生まれのいわゆる“アラサー世代”ですが、書く言葉や歌いたいメッセージに変化は?

 30歳を目前にして、いい意味で“言葉を選ぶ”ようになったかなと。私はもともと“みんな平和になればいいな”って考えるタイプなので、私が発する言葉や歌もできるだけ人に優しいものであってほしいと思っているんです。

 ただ、ここ最近は、SNSをきっかけに私を知る人が増えて、マイナスなコメントも目に入るようになりました。以前の私だったら、そうした言葉を見て、めっちゃ腹が立ったり落ち込んだりしたんですが、少しずつ違った捉え方をするようになってきましたね。

 そうそう。私、深夜のドキュメンタリー番組とかを見るのがめっちゃ好きなんですよ。いろんな生き方や人生があるなってつくづく思うし、“たくさんある人生の中で、いま、私は好きな歌を歌えて生活できる。こんなありがたいことはないな”って思うようになりました。

 その延長線上ではないですが、SNSでいろんな言葉を投げかけられても、怒りとか悲しみとかじゃなく“この人には、何かあったのかもしれないな”と。そうした何かを抱えて苦しい人が元気になれたり、癒やされるような歌を届けられるように頑張りたいです。

透明感とエネルギッシュさを併せ持つ有華さんから、目が離せない! 撮影/松島豊

(取材・文/キツカワユウコ、編集/本間美帆)


【PROFILE】
有華(ゆか) 1994年生まれ、大阪府出身。幼少期からピアノ・合唱を始め、18歳のときにシンガーソングライターとして活動を始める。2022年4月に配信した『Partner』はストリーミング総再生5000万回、SNS総再生回数13億回、LINEリアルタイムランキング1位を記録。2023年1月にメジャーデビューを果たし、同月にリリース配信の『Baby you』はTikTokでの投稿数が国内外合わせて50万本を突破し、SNS上の楽曲の再生数は20億回を突破。ストリーミング再生数も全世界で1,500万回を突破し、SNSで大きな話題となった。YouTube→@yuka__song、Instagram→@yuka__song