大人になってから発達障がいの特性が顕著になる人も

──作中で、「グレーゾーン」というワードが何度か出てきました。「アスペルガー症候群」などの病気と診断されなくても、自分の左側に人がいないと落ち着かない春のように「もしかしたら自分は人とちょっと違うのかもしれない」と悩んでいる人はたくさんいるかと思いますが、作品や役を通して何か考えられたことはありますか。

 この作品の撮影が終わってからも、発達障がいについての勉強会を開いてもらったんですけど、お話を聞くたびに新しいことを学んでいます。中でも僕が驚いたのは、大人になってから「発達障がいの傾向がある」「その特性がある」と気づく人がある程度いるということでした。

 子どものころや若いときに人とのコミュニケーションが取りにくいことや「自分はちょっと浮いているのかもしれないな」と思うことは僕もありますし、そう思ったことのある人はたくさんいると思うんです。別にそれはマイナスなことではないし、僕の近しい人も発達障がいを持っていて、子どものころから彼を見てきましたが、当時から成長に遅れが出ていることはわかっていたし、そういうものだと思って特別視することはありませんでした。

宮沢氷魚さん 撮影/junko

 でも、それに気づかない、知らない人がたくさんいるということをこの作品を通して知ることができました。もう少し自分の視野を広げて「自分の周りにも発達障がいの特性を持った人がいる可能性がある」ということを常に意識して、いろいろな人とつながりたいという思いが芽生えたことは、僕にとって大きなことでしたね。

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 後編では、宮沢さんが自分に戻れる時間の過ごし方や、最近作ったアメリカの定番メニューについてなど、プライベートのお話もたくさんしていただきます!

(取材・文/根津香菜子、編集/福アニー、撮影/junko、ヘアメイク/吉田太郎(W)、スタイリスト/庄将司)

【Profile】
●宮沢氷魚(みやざわ・ひお)
1994年4月24日生まれ、アメリカ・サンフラシスコ出身。2015年に、第30回『MEN'S NON-NO』専属モデルオーディションでグランプリを受賞しモデルデビュー。17年にTVドラマ『コウノドリ』で本格的に俳優デビューを果たす。その後も数多くの映画やドラマに出演し、映画『エゴイスト』(23年)で第16回アジア・フィルム・アワード最優秀助演男優賞を受賞した。6月から始まる舞台『パラサイト』に出演。

【Information】
●映画『はざまに生きる、春』
監督、脚本:葛里華
出演:宮沢氷魚、小西桜子、細田善彦、平井亜門、葉丸あすか、芦那すみれ、田中穂先、鈴木浩文、タカハシシンノスケ、椎名香織、黒川大聖、斉藤千穂、小倉百代、渡辺潤、ボブ鈴木、戸田昌宏
公開日:2023年5月26日(金)
(C)2022「はざまに生きる、春」製作委員会

映画公式サイト:https://hazama.lespros.co.jp/