そもそも「オカルト」って?

 ここでいったん、龍先生が作中で引用している「オカルト」と「オカルト番組」とは何か、確認しておきましょう。

「オカルト」とは超能力や怪奇現象、霊能力、UFO(未確認飛行物体)、UMA(未確認生命体)といった不可思議で超自然的な現象のことです。1973年刊行の予言本とともに広まった終末論『ノストラダムスの大予言』や、1974年の超能力ブーム、1976年の第一次UFOブーム、1990年の人面魚・人面犬ブーム、2000年代にはスピリチュアルブームなどがありました。

 また「オカルト番組」の意味合いについて、『オカルト怪異辞典』(笠間書院)によると、

《今でこそオカルトはサブカルチャー扱いですが、当時はメインストリーム。終末論や神霊番組、超能力、UFO特集など、怪しい番組が当たり前のように放送されていました。》(『オカルト怪異事典』より)

 としており、オカルト番組は日本独自の文脈で育まれたものだとされています。

 また『オカルト番組はなぜ消えたのか』(青弓社/高橋直子)によると、1970年代は《超自然的・非科学的な〈オカルト〉を真に受けず、真偽をとやかく言わず、とにかく〈見もの〉として提示することを可能にするメディア・フレームが形成》された時代だったと解説しており、70年代当時の番組内では「オカルト」の肯定・否定の対立論争自体が見ものになっていたのだといいます。

『ダンダダン』で、桃とオカルンが自分の肯定する幽霊とUFOについて対立する構造や、桃の祖母がテレビ番組でエセ霊媒師を演じる姿は、それに重なるものがあると言えます。