レッサーパンダはどんなものを食べているの?

 レッサーパンダは雑食性の動物で、竹の葉を主食にしています。野生では小型のほ乳類や鳥類、卵や昆虫などを食べることもあります。

レッサーパンダの主食は竹の葉 写真提供/日本平動物園

 ただし食肉目に分類されるレッサーパンダの体は肉食動物に近く、本来は植物を食べることに適していません。そのため植物を食べると、うまく消化できないというジレンマを抱えています。実際レッサーパンダの糞には、竹や果物の形がまるっと残っていることも多いです。

 日本平動物園では竹の葉(毎日1頭あたり約1kg)を主食に、多い順からリンゴ、ペレット(固形フード)、ニンジン、粉末状にした竹のヨーグルト、オレンジ、ブドウ、さつまいも、ビタミン剤を与えているそう。

木の上でリンゴを食べる様子 写真提供/日本平動物園

なぜ2本足で立てるの?

 レッサーパンダというと、後ろ脚で立ち上がる千葉市動物公園の「風太」くんを思い浮かべる人も多いはず。なぜ、2本足で立てるのでしょうか?

 実は動物の歩き方には足先だけが地面についてかかとが上がっている「指行性(趾行性)」(しこうせい)、足先からかかとまで足裏すべてが地面に触れている「蹠行性」(しょこうせい)、蹄(ひづめ)を地面に付けて歩く「蹄行性」(ていこうせい)の3つのパターンがあります。

 レッサーパンダの歩き方は私たち人間と同じ蹠行性であることに加え、長いしっぽでバランスを取れるため、安定して立ち上がることができるのです。なおレッサーパンダは立ち上がることでやわらかい竹の葉を探して食べたり、周囲を警戒したりしています。

 日本平動物園のレッサーパンダ担当の飼育スタッフさんに、「特に見てほしいところはありますか?」と聞いてみました。

「レッサーパンダは体の大きさに対し、1日に食べるエサの量がとても多く、他の動物に比べて食べている姿を見る機会の多い動物だと思います。2本足で立ち、器用に竹をつかんで食べる姿はレッサーパンダの進化が凝縮された姿でもあります。また、とても一生懸命で幸せそうな姿でもあります。細い枝を渡る身体能力や、寒さから身を守るため全身フワフワな毛が生えているところなど見どころは多いのですが、エサを食べているときの幸せそうな姿がいちばん見てほしいところですね」(飼育スタッフさん)

2本足で立ち上がる姿はレッサーパンダの進化が凝縮された姿……そう思いながらレッサーパンダを見ると、今までとは違った見方ができそう。動物の進化は不思議で、本当に面白い! 写真提供/日本平動物園

レッサーパンダは、実は2種類いるって本当?

 本当です。あまり知られていませんが、実はレッサーパンダには「シセンレッサーパンダ」と「ネパールレッサーパンダ」の2亜種が存在しています。

 動物園でよく見かけるのはシセンレッサーパンダで、日本は全世界で最も飼育頭数が多いことで知られています。一方のネパールレッサーパンダは欧米を中心に飼育されていて、日本では静岡県の熱川バナナワニ園でのみ飼育されています。ネパールレッサーパンダはシセンレッサーパンダよりも小柄で、茶色が薄いといわれています。

 なおレッサーパンダの繁殖計画・情報交換の司令塔である日本平動物園では、日本で飼育されているすべての個体や血縁関係を把握しているそう。そこで飼育スタッフさんに、レッサーパンダの繁殖に取り組む際の注意点を聞いてみました。

繁殖は『ペアリング』『妊娠』『出産』『仔育て』の時期にそれぞれ気をつける点があります。

『ペアリング』では相性を見きわめ、観察を行いながら同居させます。『妊娠』と『仔育て』の時期は、日本平動物園ではこまめに体重測定を行い、なるべく体に負担をかけないエサの用意を心がけています。

 また、『出産』『仔育て』の時期の母親は非常に神経質です。レッサーパンダが安心して『出産』『仔育て』ができるよう、産後1週間は人の気配を感じさせないよう掃除も厳禁で、離れた部屋から巣箱に設置したカメラで親子の様子を見守ります。仔どもの健康がいちばん大事なので、お客様への仔どものお披露目も生まれてから3か月以上後になります」(飼育スタッフさん)

日本平動物園では飼育スタッフさんがレッサーパンダのことを第一に考えた環境作りに取り組んでいるからこそ、レッサーパンダたちが安心して出産、仔育てできる 写真提供/日本平動物園