レッサーパンダはペットとして飼えるの?

 レッサーパンダは見た目も動きも愛らしく、動物園で特に人気のある動物ですが、ペットとして飼育することはできるのでしょうか?

 その答えは「飼育できない」、そして「飼育してはいけない」となります。

 レッサーパンダは絶滅危惧種であり、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは野生で非常に高い絶滅のリスクに直面していると考えられる「EN」に分類されています。またワシントン条約の「付属書I」に掲載されているため、国際的な商業目的の取引ができません。

 現在野生のレッサーパンダの生息数は2500~1万頭とされていて、このままでは数十年内に絶滅してしまうと考えられています。レッサーパンダが生息数を減らした主な原因は開発による生息地の減少と密猟ですが、残念ながら現在も毛皮やペット目的での密猟が絶えません。かわいいから、飼いたいから……どんな理由であれ、レッサーパンダをペットとして飼うこと=レッサーパンダを絶滅に追いやることであり、許されることではないと知ってもらえたらと思います。

 またレッサーパンダは不思議なことに、竹の葉を食べないと健康を保つことができません。レッサーパンダ用のペレットはあるものの、完全に竹の代わりとなる食べ物は見つかっていないのです。毎日1頭あたり1kgもの竹を用意することは動物園でも非常に大変な作業であり、個人では不可能と言い切ってもいいでしょう。

リンゴをつかむ、レッサーパンダの鋭い爪 写真提供/日本平動物園
食肉目の名残で鋭い犬歯は残っているが、他の歯は平たく竹の葉を食べやすいように進化している 写真提供/日本平動物園

 日本平動物園でも、レッサーパンダの飼育には細心の注意を払っているそう。

マーキングとしてあちこちに少量のおしっこをつけてまわること、暑さに弱いので夏は屋外では飼えないこと、爪が鋭く牙もあるので飼育員を含めたいろいろなものを自覚なく傷つけて歩きまわること、小さな体のわりに縄張りが広いため運動量が多いことなどを考えると、レッサーパンダの健康に配慮して飼育することはとても大変です。また、動物園ではレッサーパンダの獣舎に感染症を持ち込まないように、毎日こまめな靴裏の消毒を行っています」(飼育スタッフさん)

 最後に、飼育スタッフさんからメッセージをいただきました。

人知れず山奥でひっそりと暮らしてきたレッサーパンダが、実はこんなに魅力的な生き物だと知ってもらいたいです。そして現在進行形で人知れずひっそりと絶滅に近づいているレッサーパンダのために、“私たちも何かできることがないだろうか”と考えるきっかけが生まれたらいいな……と思っています」(飼育スタッフさん)

絶滅の危機に瀕しているレッサーパンダ。私たちには何ができるか、考えてみよう 写真提供/日本平動物園

(取材・文/三日月影狼)

●静岡市立日本平動物園
〒422-8005 静岡市駿河区池田1767-6

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