ツカミで意識するのは、異文化というより異国の違い?

――敗者復活戦の以前・以後で、変化はありましたか?

くるまありましたね。趣味を仕事と捉えてくれた人たちによって、仕事がめっちゃ増えました。特に、地方に呼んでもらえるのが嬉しいです。大阪、好きですし。だからある種、いまは趣味と仕事の中間ができているのかもしれないです。大阪の芸人さんは“趣味”として好きですし、“大阪の人たちを笑わせるには”と考えるのは“仕事”としてやりがいがあります。NGK(なんばグランド花月)はやっぱり手強いですから。

――大阪でウケるために、例えばどんなことをしていますか?

くるま:具体的に言うと、ツカミ(漫才などの冒頭で、観客の心をつかむために行うやりとりのこと)はいらないです。漫才を見る文化がない地域の人たちは、まず漫才師がどういう人間なのか知って、人となりで笑うんですよ。だけど大阪は、お笑いがお笑いとして独立しているので、早くネタに入っておもしろいことを言えばいいんです。僕らの感覚だと、知らないやつがいきなりボケても笑うわけがないと思うんですけど、そうじゃないんですよね、大阪は。だから俺はもう、違う国だと思っています。同様に、福岡や名古屋のような大都市もそこでひとつの価値感が生まれがちなので、違う国ですね。

高比良くるまさん 撮影/相馬太郎