事前に打ち合わせするよりも「やったその場で何が出るのか」楽しみだった
──兄弟でわちゃわちゃしているシーンも、みなさんのそのときのノリに任せて、という感じだったのですか?
そうですね。飯塚さんが今作の脚本も書かれているので、自分の書いたものを役者がどう乗せてくるのか楽しみにしているところもあったと思うんです。「プロとして、こう来てくれよ」という期待も込められていたと言いますか。なので、演者同士でも事前に打ち合わせすることは特になかったです。話すよりもやったほうが早いし、お互いに「何が出るかな」と楽しみにしていたところはあります。
──プライベートでもみなさん仲がいいんだなということが伝わってきましたが、現場での様子を教えてください。
具体的にどんな話をしたかは覚えていないんですけど、基本的に僕と日村さんが無駄にずっとボケ続けて、それを(伊藤)沙莉がいちいち突っ込んでくれて、(柄本)時生がそこに遅めに入ってくる感じです。現場ではずっと笑っていましたね。
──時生さんがちょっと遅めにくるというのは、みなさんが一通り盛り上がってからひっそりと入ってくる感じだったのですか?
時生は入りたいんだけど主導権を握らない性格なので、いつもみんなが盛り上がっているのを見ながら「いつ入ろうかな?」みたいに様子をうかがっていて(笑)。そういうところでも「弟感」が出ているんですよ。
不意打ちのようにグッときてもらえるような作品になったら
──試写を拝見し、笑いあり感動ありで感情が忙しかったのですが、まさかウナギの産卵で泣くとは思っていませんでした。中村さんが日出男として、また、一観客として“ホロッ”ときたのはどのシーンでしたか?
日出男としての“ホロッ”は作中で描かれているので「見ていただければ」と言うしかないのですが、自分が土星に帰るにあたって誰かを連れていかなきゃいけないというところから始まる物語でもあるので、苦しいことも多かったと思います。もちろん、そういうことも忘れて楽しかったこともあったと思いますけど、物語が進んでいくにつれて何らかの帰結点に集約していく段階では、“ホロッ”どころじゃないこともきっとあったでしょうね。
僕自身は“ホロッ”とするタイプではないので、客観的な面で言うと「全体的に」になっちゃうのですが、おっしゃったように意外なところで“ホロッ”とするのは「そういう風になったら面白いな」と思って作っていたし、作るうえでは僕らが“ホロッ”としちゃいけないんですよ。映画を見ている人のほうが気づいたら前を進んでいるみたいなことが、こういう仕事やものづくりのキモだと思うので、「感動させよう」とか「泣かせよう」とするとお互い興ざめしちゃうんですよ。
なので、作品全体として捉えながら、不意打ちのようにグッと入ってもらえるようなものになったらいいなと思いながら作っていたし、そういう目線で関わっていたので。それを言葉で説明するのが難しいので、うまいこと書いてください。
──尽力します(笑)。
日出男の根底にあるものが如実に出たシーン
──作中で、日出男が夢二兄ちゃんとTHE BLUE HEARTSの「リンダ リンダ」を熱唱するシーンが好きでして。あそこで2人の距離がぐっと縮まったのかなと感じたのですが、あのシーンの思い出や裏話などがありましたらぜひ教えてください。
あのシーンでは、日出男がどこまで「リンダ リンダ」を知っていて、どこまで夢二に乗っかるか、みたいなことを考えながらやっていた気がします。飯塚さんから「初めて聞くけど、歌はなんとなく知っている感じでいいんじゃないか」と言われたので、日出男は「なんだこれ!?」と思って「自分も一緒に歌ってみようか」となり、だんだんテンションが上がって、気づいたら甲本(ヒロト)さんと同じような動きになっていた、というたまたまのつもりであの一連のシーンをやっていました。
思い出は、50歳の日村さんが学生服を着ているということで、とりあえず写真をいっぱい撮りました。50歳で学生服を着る人なんて、思想の強い人以外いないですからね(笑)。
──初めて音楽やギターと触れ合ったときの日出男の喜びや感動の仕方が、子どもが初めて何かに出会ったときのように見えて、そのときの中村さんの表情も印象に残っています。
それはもしかしたら、さっき僕が話した「いろいろなことを勉強している子どものような」という、日出男が根底になんとなく持っていたものが如実に出ているからかもしれないですね。
──日出男のように、もし「あと3日でいなくなる」という人がいたら、中村さんは残りの時間でどんなことをしてあげたいですか?
夢二が日出男に「やりたいことリストを作れ」みたいなことを言いますが、僕も自分がサポートできることだったら、一緒にやってあげたいなとは思います。
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後編では、中村さんの朝ごはん事情や「家族とは」についての持論、最近気になっている動物のことなどいろいろとお話しいただきます!
(取材・文/根津香菜子、編集/福アニー、撮影/有村蓮、ヘアメイク/Emiy(エミー)、スタイリスト/戸倉祥仁(holy.))
【Profile】
●中村倫也(なかむら・ともや)
1986年12月24日生まれ、東京都出身。最近の主な出演作に、ドラマ『石子と羽男』(TBS系)、映画『ハケンアニメ!』、配信ドラマ『仮面ライダーBLACK SUN』(Prime Video)、 舞台『ルードヴィヒ ~Beethoven The Piano~』『ケンジトシ』など。現在、『ザ・バックヤード 知の迷宮の裏側探訪』(NHK Eテレ/ナレーション)が放送中。7月期の連続ドラマ『ハヤブサ消防団』(テレビ朝日系)で主演を務める。
【Information】
●映画『宇宙人のあいつ』絶賛公開中!
監督、脚本:飯塚健
出演:中村倫也、日村勇紀、伊藤沙莉、柄本時生ら