海外では実践的な芝居が求められる

──特に印象に残っている現場での思い出があれば教えてください。

 お芝居のアプローチ方法でいうと、今回はとにかく実践的なお芝居が求められました。例えば、ある場所に閉じ込められて何かを探すというシーンを想定して、「ここを薄暗くして大事なものをどこかに隠すから、それをあなたが見つけてください」「たまに警備員が来てライトを照らすけど、絶対に見つかってはいけません」というレッスンがあったんです。そこで実際に感じた恐怖や孤独を表現しなければいけなかったのですが、実際の感情を体感することが目的のレッスンなんです。日本では経験したことがなかったので面白いなと思いましたし、いろいろなアプローチの仕方があるんだなと思いました。

──今作の舞台は海の真ん中で逃げ場はなく、助けも来ない状況ですが、もし福士さんがユウトと同じような極限状態に置かれたら、ご自身はどうなると思いますか?

 ユウトはすごく冷静で、「問題があったら解決しよう、解決したらすぐここから出よう」という思考が働いていると感じるセリフがあったんです。僕もユウトと同じで、冷静になると思います。何か事故や災害などがあったときや、みんながパニックになるようなときは、より「自分は冷静になろう」と思うんですよね。

福士蒼汰さん 撮影/junko

──前作のSeason1は、配信日当日にご覧になったそうですね。『THE HEAD』という作品全体の魅力や面白さをどんなところに感じますか。

 前回は配信開始と同時に見始めて、一視聴者として楽しませていただきました。初めは普通に洋画を見ている感じだったのですが、そこに日本人である山下(智久)さんが出演されているので「現場はどんな感じだったんだろう」という気持ちが大きくなって、だんだんと客観的な視点のほうが大きくなった気がします。

 山下さんも『THE HEAD』が初めての海外作品だったとおっしゃっていて「ここから出発していくんだな、すごいな」と思いながら見ていました。

──その当時は、まさか自分が次作に出るとは思っていなかったのでしょうか。

 そうですね。20代のうちに海外に行きたいという大きな夢があったので、20代最後の年に叶(かな)えることができて嬉しかったです。しかも、自分が好きで見ていた作品のシリーズだったので、光栄だと感じました。

自分が作った道に後輩俳優が続いてくれたら

──海外作品に出演するということは、福士さんにとってどんな意味を持ちますか?

 20代のうちに海外作品に挑戦したいと思っていた理由のひとつは、自分が道を作っていくことで、後に続いてくれる人がいるんじゃないかなという思いがあったからです。

 10~20代の若い俳優さんたちや「日本生まれ日本育ち」で海外に行ったことのない人でも、「自分も頑張れば海外の作品に出られるんだ」と思ってくれたら嬉しいし、そうなっていけば日本の俳優業界も、より豊かになるんじゃないかなと思うんです。なので、「自分がやりたい、挑戦したい」という気持ちと、「下の世代の人たちがついてきてくれたら嬉しいな」という両方がありました。

福士蒼汰さん 撮影/junko

──今回の出演を経て、もっと海外で活躍していきたいという思いは強まりましたか?

 もちろんあります。「2作目はできない」「もうやりたくない」という気持ちはまったくなく、僕はまたやりたいと強く思っています。今回が第一歩。第二歩、第三歩とつなげていきたいです。