オリジナル商品やバリエーションの豊富さの秘けつ

 問屋から商品を仕入れていたものの、不良ファッションを扱うメーカーや問屋は決して多くはないうえに、減る一方。そこで、石川さんは、自分でオリジナル商品を作ることにした。

「既存の不良ファッションを見ていると、このデザインにあのフォントは合わない、と気になることがよくありました。徹底的に悪く見せたり、とがったファッションを追求するなら、自分で作ったほうが早いと思ったんです。

 当時はすごい円高で、中国の工場に発注するときに、何種類も大量に発注したほうが安くなったので、アイテム数がどんどん増えていきました」

社屋の一角にある、衣装の撮影所。もはやクリエイターなのだ 写真/本人提供

 こうしてしゃれこうべや龍、虎や般若(はんにゃ)など、ヤンキーファッション定番の意匠をふんだんに使い、石川さん独自のセンスが光るアイテムがどんどん増えていくことに。大まかな方向性はいまも石川さんが担っているが、近年は海外のデザイナーが手がけた絵柄も取り入れているという。

ドラマ『ナンバMG5』(フジテレビ系)で間宮祥太朗さんが着用していたモノクロの虎柄アロハシャツは、イギリス人女性デザイナーの作品です。この人は日本のヤンキーカルチャーに興味があってデザインをしてみたいと、Facebookで連絡をくれました。他にも自分がネットで探したデザイナーに連絡を取ることもあります」

 たくさんのアイテムを作るのはいいとして、アパレル業界の宿命として、流行との戦いがある。ある年にたくさん売れた人気アイテムであっても、シーズンが終わるころにセール販売し、ときには廃棄処分をせざるをえないことが多い。

 しかし、不良ファッションには目まぐるしい流行というものが存在しないため、細く長く売ることができるという。実際、2012年に作った龍の柄のジャージはいまでも一番人気で、モデルチェンジもせずに売れ続けているという。

「不良ファッション自体が下火で、流行(はや)りすたりもないので、極端に売れはしないけど、まったく売れないということもない。会社があるのは新潟の田舎なので、在庫をたくさん抱えておける大きな倉庫もあります。都会でこの在庫量で商売していると、たぶんビジネスとして成り立たないと思います」

社屋。立地のよさを生かして、在庫を抱えることもできる 写真/本人提供
ところ狭しと商品が並ぶ 写真/本人提供

 

いまでは『BIRTH JAPAN』のベストセラー商品だ 写真/本人提供

ピコ太郎のあのトレードマークの衣装も

 2016年に世界的なブームを巻き起こした『PPAP』(ペン・パイナッポー・アッポー・ペン)のピコ太郎さんが着用していたアニマル柄ファッションは、実は『悪党の店 BIRTHJAPAN』で販売していた商品だった。

 2011年に仕入れたものの、全然売れなくて、石川さんが珍しく「仕入れに失敗した」と思っていたものだったという。

2014年くらいにやっとほぼ売り切ったと思ったら、ピコ太郎さんの衣装で注目されて、“同じものをください”と注文がいっぱい来ました。取材で問い合わせが来るまで、うちの商品だと気づかなかったくらいです。でも、このころには在庫はほとんどなかったので、あまり儲(もう)かりませんでしたけど」

 また、“悪党の店”を掲げているだけあって、初めて商品を購入しようとしている人からは、「本当に商品が送られてくるのか?」「不良品があったときに、ちゃんと対応してくれるのか?」と不安を抱かれることも少なくないという。

 石川さん自身、そのことは重々承知しており、サイトでは“悪”を全面に出しているものの、迅速かつていねいな対応を心がけているという。

「不良ファッションを扱っているからこそ、お客さんを不安にさせないようにといちばん気をつけなくてはならないと思っています」

会社に貼られているポスター 写真/本人提供
口の悪さと相反して、内容は悪党の店らしからぬ懇切ていねいさがうかがえる 写真/本人提供