芸人を志すきっかけは小学校の友達のパフォーマンス
小学生のときに、そんな自分をどうしたらいいだろう? と悩みまして、当時は絵が好きだったので、“絵を頑張ってみたらわかってくれるんじゃないか”と。それで、お楽しみ会が図書室で開かれるときに奮起したわけです。家族や同級生、先生が見ている中、自分は紙芝居をひとりでやりました。紙芝居だから自分の姿は見せずに裏から声を出すだけだし、なにせ得意な絵が披露できますからね。
ストーリーはオリジナルで『ねずみのヒーロー』です。小さな声で1枚ずつめくりながら、セリフを話しました。最後の1枚を読み終えたら、ぽつりぽつりと拍手が聞こえてきました。でも、なんとなく会場は暗い。そりゃあそうですよね、登場するのはネズミだけ、しかもみんな灰色ですから。まさに色が地味なんですよ! モルモットやハムスターも出てこない。今思うと、なんでネズミ色のネズミだけの話にしてしまったのかと反省しています。THE BLUE HEARTSの『リンダ リンダ』の歌詞に出てくるような、清らかなメッセージ性もなく、
──可愛いじゃないですか(笑)。
問題はその後、次の番の友達がすごかったんです。八代亜紀さんの『雨の慕情』を派手なカツラと衣装、演歌歌手ばりにメークして、“雨々ふれふれ もっとふれ”と熱唱しながら、ひじに下げたカゴから飴をまいて会場を歩き、大爆笑ですよ! 僕はものすごく感動して、やっぱり表に出ないと人はダメなんだなって感じましたね。それが芸人を目指すきっかけになりました。
中学に入ったら一気に変わろうと、入学式の日に、
──“今日から俺は!!”ですね(笑)。
呼び出されたシーンは、こんな感じです。
「お前、剃り込み入れてるけどどこの小学校出身なんだ」
「はい! 自分は◯◯小学校の鈴木任紀(ひでき・本名)です!」
「お前はペンギンか!」
すごく緊張しちゃって“気をつけ”の姿勢のままで、手が外側に反り返ってしまってたんですよね。「いえ、ペンギンではありません」って答えたんですけど、伝わらず。だからその手がペンギンだって言ってんだよ! って怒鳴られまして。結局、お前はペンギンか、違います、の会話を繰り返し、
「もう、いい。お前はツッパリでもないし、ガキ大将でもなんでもない。変なヤツだから早く帰れ」
と言われて無事に帰りました。そこから学校で会うたびに、「おい、ペンギン!」って声をかけられるようになり、憧れていたツッパリの先輩からボンタンをもらったんですけど、自転車で転んで穴が開いちゃいました。