若手の登竜門『おもしろ荘2018』(日本テレビ系)で優勝を果たし、YouTubeで毎日配信しているコントが話題を呼んでいるコンビ芸人・レインボー。
明るいキャラクターも相まって、華やかな印象のふたりだが、若手時代はファンが激減したり、小道具を捨てられたりと悔しい思いをしてきたそう。
もともと別の相方がいたというふたりがレインボーになった経緯から、おもしろ荘前夜までを聞いた。
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解散したばかりの首席合格者と人気者が結成したコンビ
──2016年にコンビを結成したおふたり。どちらからお声がけしたのでしょう?
ジャンボたかお(以下、ジャンボ):NSC東京の18期で同期だったんです。それで「感動ピスト」というコンビを組んでいて、主席で卒業したのが僕、実方孝生(じつかた たかお)だったんですね。ちなみに、その年の大阪の主席はゆりやんレトリィバァでした。
──そのときの相方は、池田さんではないんですね?
ジャンボ:はい。池田は池田で、おばたのお兄さんと「ひので」というコンビで活躍していました。彼らは、もうかなり人気だったんですよね。お互いに4年ほど、コンビで活動していたんですけど、俺がもう、コンビ仲が悪くて解散するみたいになっちゃって。そのころから、池ちゃんの俺への猛アプローチが始まったんですよ。
池田直人(以下、池田):え〜? 解散するよりも、もっと前から仲よかったイメージだったけどなー。解散するって話も(新宿西口の)思い出横丁で聞いたで?
ジャンボ:うそ!? 全然覚えてないや(笑)。
──(笑)。では、池田さんがジャンボさんを誘ってレインボーとして始動したんですね。
ジャンボ:そうなんです。深夜12時に突然呼び出されて「さっき解散してきたから、コンビ組んでほしい思ってんねん」って言われて。「彼女と別れたんだよ。実はずっと前から好きだった。付き合ってほしい」って、別れた足で、そのまま告白してくる最低の男みたいに(笑)。
池田:いやいや、それは言い方の問題やろ! その前から、僕らのコンビが解散するかもしれないってことでも、相談入れてたからね。
──池田さんは、なぜジャンボさんとコンビになりたかったのでしょう?
池田:解散して、自分の中で“やるしかない”って思ったときに、同期でいちばんおもしろくて、仲もよかったジャンボと組めたらいいなって思ったんです。
──誘われたジャンボさんが、コンビを組むことを決めた理由はなんだったのでしょう?
ジャンボ:それまではひとりでネタを書いていたので、今度はネタが作れる人とふたりで書きたいなって思ってたんです。自分に絶対的な才能があるとも思っていませんでしたし。それに「ひので」って本当に人気者で、その池ちゃんと組んだら、俺もキャーキャー言われるんじゃないかって思ったんですよね。
人気が激減「新コンビって、応援されへんな」
──実際に組んでみて、ファンの方からの反響はどうだったんでしょう?
ジャンボ:“コンビ組んだら、俺もキャーキャー言われちゃったらどうしよう”なんて思っていたのが運の尽きですよ。池田が俺と組んだことによって、ファンが2人まで減ったんです。俺が池田によって人気を引き起こされるんじゃなくて、池田が俺によって引きずり下ろされて人気がなくなるという。大事件でしたよ、あれは。
池田:新コンビって応援されへんなって思いましたよね。
ジャンボ:当時はね、チケットを自分で買い取って、自分で売らなきゃいけなかったんです。もともと池ちゃんは自分の分とプラスして、チケットを捌(さば)ききれない人の分まで売っちゃうような子だったんです。それが自分の分も「ちょっと捌けないかも」って言い出して、「冗談じゃないよ」って感じでしたね。
池田:ほんまに、そうやったね。
ジャンボ:しかも、ステージでもめっちゃスベってましたからね。コンビを組んだときに、ダンビラムーチョの大原さんに「お前らコンビ組んだんだ、楽しみだ!」って言われていたのに、ステージを見た後で「え、お前らふたりであんなにスベる……!?」って驚かれて。ちょっと思い出したくないレベルで、凹みましたね。
──当時はどんなネタをやっていたんでしょうか?
ジャンボ:やりたいことは、いまとそんなに変わっていないんですね。“新小岩駅の駅員さんと夢破れた女の子が恋をする”みたいなネタを、俺と池ちゃんで大笑いしながら作ったのですが……まあ、スベったね?
池田:ほんまに。それで、ちょっとベタな漫才とかもやったりして、こんなんしなきゃいけないのかなって悩んでた。
ジャンボ:結局、あのネタは5年後披露したら、しっかりウケたんですけど。“ウケなきゃ!”って焦っていたのを覚えています。
試行錯誤の末作った小道具を、劇場支配人に断捨離され号泣
──では、おふたりのなかでは、かなりつらい日々を送っていたのですね。
池田:はい。特に僕の場合は、以前コンビを組んでいたおばたのお兄さんが売れているのを見て、病んでいた時期もありました。なんとか売れたくて、ゆるキャラを作りました。
ジャンボ:あったね! 俺を、着ぐるみの中に入れる幕張のハリモグラ「も〜くん」。
池田:幕張はジャンボの地元なこともあって、あのキャラクターで幕張の営業がめちゃくちゃ増えたらいいなと思ったんです。それで「なんとしてでも食っていかなあかん!」と思って、自腹で10万円使って、12月のライブで披露して「来年からは、これや!」と思ってたら……。
ジャンボ:大掃除で捨てられちゃったんです。
──え!? 誰にですか?
ジャンボ:当時の劇場の支配人です。掃除がすごく好きな人で、年末の大掃除のときになんやこれって捨てられちゃったんですよね。あのとき、池ちゃん、めちゃくちゃ泣いてたよね。
池田:そうそうペット死んだみたいな。
ジャンボ:いま、あの当時の池ちゃんに会えたら10万あげたくない? また、作りなって。
池田:いや、捨てるのをなんとかするわ。
ジャンボ:それは、そうか(笑)。ああ、つらかったな。なんか、つらいことばかりじゃない? いいことあったっけって思っちゃうくらい。
池田:ほんまやな。
ジャンボ:でも、このときは、大きくもめたことはなかったよね。
池田:うんうん。『おもしろ荘』前は、カラオケとかガストで1日8時間ぐらいネタ合わせしてたり、ジャンボが持ってきた営業とか行ったりしてたけど、全然もめへんかった。
ジャンボ:あったね、5000円ぐらいもらえる営業だよな。
池田:横須賀の電気屋で、1時間半に1回俺らが出ていって「この電化製品いいですよ」って話すみたいな。その5000円で、安いおにぎりを探して食べたのを、めちゃくちゃ覚えてるわ。
想像と違いすぎた、『おもしろ荘』での優勝
──「おもしろ荘」での優勝は、結成から1年11か月後。かなり早い印象があったので、そこまで悔しい思いをされていたことが意外だと感じました。
池田:いま、思えばめっちゃ早かったんですけど、当時は「早かった」なんて思えなかったんですよね。
ジャンボ:そうそう。劇場で全然ウケなくて、つらい思いをしていたから、長く感じていました。
──そんなにウケていなかったんですか?
ジャンボ:『おもしろ荘』より前にウケたのは1回だけだったと思います。AbemaTVのガチンコネタバトル『お願い!マンピンコン』っていうのに出演したときに「キレイだ!」がめちゃくちゃウケて。
池田:ウケたな、あれ。
ジャンボ:それがちょっと自信になったんです。『おもしろ荘』で優勝できたのは、そのおかげだと思っています。
──では、『おもしろ荘』で優勝したときはかなり嬉しかった?
池田:その前の年に、優勝したのがブルゾンちえみだったので“この流れだ!”とは思っていましたね。
ジャンボ:本番もウケてましたからね。でも、いちばん盛り上がったのは、3位以内にも入らなかったひょっこりはんでした。僕らよりもすごい速度でフォロワーが増えて、彼のほうが盛り上がっていたのを覚えています。変わったことを挙げるなら、やっと劇場での市民権を得たぐらい。描いていた優勝後の姿とは、全然違いました。
(取材・文/於ありさ、編集/本間美帆)
【PROFILE】
レインボー ◎NSC(吉本総合芸能学院)東京18期生のジャンボたかおと、池田直人からなるコンビ。2018年の『おもしろ荘』(日本テレビ系)で優勝を果たし、身の周りにいそうでいないクセの強いキャラクターを演じるコントが話題。YouTube『レインボーコントチャンネル』の登録者数は94万人を誇る。近年、ジャンボは俳優として、ドラマ『推しが武道館いってくれたら死ぬ』(ABCテレビ・テレビ朝日系)への出演、池田はコント内でしていたメイクを特技として生かしYouTubeの別アカウントで美容についての配信を行うなど、それぞれの活動も話題。YouTube→@rainbow_conte