ドラマ主題歌「名前のない愛でもいい」の裏にあった“タイアップの制限”を明かす

 意外なところでは第7位に、'97年にアニメ『逮捕しちゃうぞ』のエンディングテーマとなった「空を見上げて」がランクイン。広大な大地を思わせるようなロックナンバーとなっている。

「アニメのパワーはすごいですね。ちなみにもう1曲、アニメ『幕末機関説 いろはにほへと』のタイアップである『愛の剣』は、実に男気あふれる曲です。私は幕末の日本を支えた坂本龍馬はじめ、当時のクレイジーボーイズの大ファンなので、そんな彼らの生き方を曲に投影しました

 タイアップといえばもう1曲、現在ストリーミングサービスは未配信曲であるが、'94年に発売され、2時間ドラマ『火曜サスペンス劇場』のエンディングテーマ曲となった「名前のない愛でもいい」(作詞:秋元康)を思い出す。こちらも白井貴子が作曲を手がけているのだが、正直に言って彼女が作曲したとは思えないほど、他の“火サス曲”とあまりに似通った印象だけが残る。ゆえに、よほど“制約”が大きかったのではと想像してしまうのだが……。

「そう! あの曲は本当に大変でした。番組サイドの要望で何度も作り替えたのを覚えています」

 そして、白井のデビュー曲「内気なマイ・ボーイ」が第15位にランクイン。作詞は、当時のヒットメーカーである竜真知子と白井の共同名義となっている。

「もともと詞・曲ともに私だったんですが、ヒットを目指し詞を補強していただくため、プロデューサーが竜真知子さんに依頼しました。竜さん作成の部分が多いですが、曲のイメージを決める《シャラララ~》の部分は私のオリジナル。“もっと強気に他の部分も作らせてもらったらよかったかな〜”とも思いますが、当時、そんな判断は私にはとてもできませんでした(笑)。最近のライブでは、場が和むように《シャラララ~》を、ちょっとコミカルになる感じで歌っています(笑)

作品ひとつひとつの制作秘話を真剣に、だがユーモアも交えて語ってくれた 撮影/山田智絵

推しアルバムは『COSMIIC CHILD』! '80年代の白井貴子の魅力がたっぷり

 さらに、意外と低い順位で、もっと聴いてほしい曲を尋ねてみると、

「'87年のアルバム『COSMIIC CHILD』はオリコン3位で、私の中でも誇りとなっている作品ですが、Spotifyの再生回数TOP30には収録曲がほぼ入っていないんですね。特に『COLOR FIELD』は私の代表曲で、今でもライブで必ず歌っています。あと、『住所のないLove Letter』の骨太なロッカ・バラードも、日本の女子はほぼ書かないような作品だと思います

 でも、作詞・作曲は作家の方が担うという歌謡曲スタイルの女性ロック・ボーカリストが次々と大ヒットするなかで、私はシンガーソングライターにこだわった分ヒットしづらいのだと自覚し始めたころ、渡英しました。体力的にも時間的にも、“このペースでやっていたら終わる!”と限界を感じたんです。“もっと女性として健康的に生きて、そして曲をつくろう!”と、30代からの白井貴子をイメージしての移住でした

『COSMIIC CHILD』は、白井貴子&CRAZY BOYS名義のバンドサウンドながら、とても多彩で当時の白井貴子の集大成的な作品となっている。全体的に再生回数が少ないのは、2枚組のオリジナル盤ゆえに、ストリーミングサービスに多い初心者には手が届きづらいことも原因かもしれない。だが、'80年代の白井貴子を知りたい方におすすめの1枚だ。