高所が苦手な犬も人前が苦手な犬もいる

訓練を終えたあとにたっぷり遊ぶ 撮影/齋藤周造

 あらゆる現場で活動する警察犬ですが、人間と同様に、得意なことや不得意なこともあるといいます。

追及が得意、物を捜すのが好き、人前が苦手、高所にのぼるのがイヤ……など、犬ごとに個性が豊かです」と五十嵐警部。

 犬の特性を見ながら現場で能力をしっかり発揮できるよう、「時間さえあれば訓練をしている」と中川巡査部長は語ります。

現場活動が入っていないときなど、空いた時間ができれば警察犬と訓練を重ねています。訓練を行い、息抜きで一緒に遊んでまた訓練……その繰り返しです」(中川巡査部長)

 犬の集中力を見ながら訓練は短い時間を複数回に分けて行います。犬たちは意気揚々と取り組んでいるそう。

「臭気選別や足跡追及、薬物や銃器の捜索など、できる訓練はなんでもやります。建物の中も訓練の場として活用し、ロッカーに対象物を隠して探させることもあります。また、訓練所から出て、足跡がたくさんある河川敷で足跡追及を行うなど、現場を想定しながらいろいろな方法で訓練を実施しています」(中川巡査部長)

訓練が終わり、甘えるカーラ号 撮影/齋藤周造

 さらに、来所した警察職員も訓練に協力。嗅ぎ慣れていない新しいにおいは、警察犬の日ごろの訓練に役立ちます。五十嵐警部もそのひとり。警察犬係に着任したばかりのころは、警察犬にハンカチや靴のにおいを嗅がせ、施設内に隠れて足跡追及で探し当てる訓練をしていたそうです。

警察犬の訓練というと、『すごく厳しいのではないか』と思われる方がいらっしゃいます。ですが、警察犬は人が大好きで、犬舎から出てハンドラーとふれあうこと自体を喜びます。ハンドラーは、犬が成果を出したときは思いきり褒め、間違えていたら厳しく伝えます。犬の表情や動きを見て、感情を汲み取りながら訓練をすることで、犬自身に警察犬活動を楽しいことだと認識させ、訓練に意欲的に取り組めるようにしています」(五十嵐警部)

行方不明者の発見や事件解決のために

服従訓練。カーラ号は遠くに立つハンドラーの中川さんの指示に従う 撮影/齋藤周造

 訓練や捜査活動で犬が成果を上げたときや上手にできたときは、ハンドラーは犬をなで、表情や声、身体全体を使って大げさに喜びます。ハンドラーが愛情を持ち、褒めて叱って訓練をするのは、実際の現場活動で警察犬が能力をしっかり発揮できるようにするためだといいます。

ハンドラーは警察犬とともに、被害に遭われた方や行方不明になられた方、そのご家族の気持ちに立ち、集中して捜査にあたっています。被害者の無念を晴らすことが根底にあり、情熱をもって取り組んでいます」(五十嵐警部)

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 後編では、カーラ号をはじめとする警察犬のお手柄エピソードをうかがいます。カーラ号をやる気にさせるための中川巡査部長の工夫もお聞きしました。

*後編→【警察犬の訓練所に潜入!#2】犬ごとに性格は違い、得意不得意がある「犬の力を引き出すのがハンドラーの仕事」

(取材・文/鈴木ゆう子、編集/小新井知子)