『黒革の手帖』
あれこれと「お勉強させていただきました」

2017年放送の『黒革の手帖』の出演者 撮影/週刊女性

 1980年に刊行された松本清張の名作『黒革の手帖』。銀行員だった原口元子が、銀座のクラブのママとしてのし上がっていく、いわばサスペンス・サクセスストーリー。1982年から幾度となくドラマ化されて、それぞれ人気女優が主役の座についていた。私が記憶しているのは、浅野ゆう子、米倉涼子。そして今回プッシュする、PrimeVideoで観た、2017年放送の武井咲バージョンだ。

 正直に書くと、彼女がこの作品で主演を演じるまで、演技に圧倒されることはなかった。飛び抜けた美女であることは重々承知している。ただこの作品に登場した彼女には、気圧された気分さえ感じるほど、すばらしかった。美しさが5倍ほど増量していたように思う。

 20代ながらも銀座のクラブのママだ。高級な着物を着こなして、美貌で男たちを落としていく。おそらく発声もワントーンほど低かったように思う。色気を充満させながらの決め台詞「お勉強させていただきました」は、まさに白眉。武井咲以外に、ため息の出る妖艶さは醸し出せないだろう。余談だが、2021年放送のスペシャルドラマもよかった。結婚、出産を経て新しい美を手にした彼女の演技もぜひ。

PrimeVideo、TELASA(テラサ)にて配信中。