クイズで生計を立てるには、最短距離ばかりを求めず自分に合う道を探すべき

──日高さんのように、“クイズを仕事にする”という風潮は以前からあったのですか?

「そうですね。クイズ作家のパイオニアの方は、平成元年ごろに活動を始めたと聞きます。僕の場合は、今も昔も、とにかく先輩のみなさんの背中を見て頑張ってきた感じです。問題が思い浮かばないとつらい職業ですし、“こういう資料を見ればいい”といった作り方のアイデアや、クイズ問題は正しいかどうかのチェックが必要なのですが、その電話取材のコツなど、さまざまなことを教えていただきました。今では逆に、“クイズ作家になりたいのですがどうすればいいですか”と僕が聞かれる機会が増えましたね」

──クイズ作家を目指す若い人たちに、なにかアドバイスなどはありますか?

もう少し積極的になってもいいかなあ、と思いますね。若いみなさんから質問を受けることもあるのですが、“この問題を作るには、どのサイトを見ればいいですか?”など、ちょっと受動的なものが多いかなあ、と思います。もっと自分のアイデアでムチャなことも考えてほしいかなあ、と。時代が違うのも理解はしていますが、ちょっと早く成果を出そうと最短距離を求めすぎているかなあ、と思うことが多いです。クイズ×お笑いだったり、クイズ×芸術だったり、クイズを軸にした掛け算の可能性は無限だと思いますので、自分なりに研究して、目指したいところに一歩一歩、近づいてほしいと思います。

 と、勝手に偉そうなことを言っていますが、若いクイズプレイヤーの知識や技術は僕とは比べ物にならない素晴らしいものを持っているので、固定観念にとらわれずに頑張ってほしいです。そういえば『謎解き』というジャンルはすごい人が多いですね。『リアル脱出ゲーム』のブームから進化が止まっていないような気がします。作り手のレベルがすごく上がってきている。クイズという文化から、徐々に独り立ちしているかもしれませんね

『アタック25』が育んだ妻との絆。プロポーズは驚きのタイミングで

──奥様もクイズ番組に出演されていたそうですが、家庭ではどのような感じですか?

「よく家の中でもクイズを出し合うんですか? と聞かれるのですが、いたって普通ですよ(笑)。ただうちの夫婦の場合は、知り合ったきっかけが『アタック25』だったんです。妻が『アタック25』に出演した際に、パネルが取れなくて0枚で。あの番組は、一度出場すると、5年間は出られないんですね(当時のルール。現在は3年間)」

──出られないルールがあるのは、知らなかったです(笑)。

「その5年間に彼女をいろんなクイズの場に連れて行ったりしたんです。そして無事、5年後に、妻は『アタック25』で優勝しました。それが'05年。その頃はすでに同棲していたのですが、僕が学費から何から借金を完済したのが'08年で、その年にプロポーズしました」

──素敵なエピソードですね!

「僕は小学生の時から、ものまね四天王の栗田貫一さんの大ファンなんです。’08年の年末、品川プリンスホテルで開催された栗田貫一さんの『ものまねディナーショー』を彼女と2人で観に行って、開演前にプロポーズしました。ついこの間、栗田さんご本人にこのお話をお伝えすることができたんですが、“大丈夫? そのステージで僕、別れの曲とか歌っていなかった?”って心配していただきました」

──(笑)。日高さんはたくさんの知識を身につけた今でも、常に学び続けているように感じるのですが、今では何を学んでいるのでしょうか。

「正直、大学受験に関してはまだ不完全燃焼が続いているかもしれません(詳しくはインタビュー第2弾参照)。忙しさが落ち着いたら、またいつか東大を目指して、今度はちゃんと大学で勉強したいなって思います。当時、最後まで試験を受け切れていないので、19歳で時が止まってしまっているような感覚もあるんですよね。あの体調不良があって以来、現在もいろいろと障害を抱えながらも、なんとか身体を優先しつつ、ずっと仕事を続けています。けれど、知性だけは常に磨いていたいと思っているんです

──クイズだけではなく、学ぶことがお好きなのですね。

いま楽しいのは、代ゼミのときにお世話になった、富田一彦先生の英語の塾に通っていることです。『西進塾』という私塾なのですが、英語を話せるようになりたいというよりも、英語を通じて日本語力や知性に磨きをかけたいという理由で通っています。和訳など毎週提出しているのですが、なかなか拙くて(笑)。今の年齢にもなると、なかなかダメ出しを受けることって少なくなるじゃないですか。だから、とても貴重な機会で毎週の楽しみです。

 あと、野島博之先生(学研プライムゼミ講師)の、東大の日本史に特化した講義も受けています。東大の日本史って、知識よりも思考力が鍛えられるんです。おふたりの講義に接していると、賢いとはどういうことなのか、知性とは何なのか、とても勉強になりますね。野島先生は、僕に“まだ東大を目指すなんてすごい。26浪生という人材はなかなかいない(笑)。無理せず好きに勉強を続けてね”と言っていつも励ましてくださり、勇気をいただいています」

──ずっと探求心を持ち続けているのですね。

「受験に限らないんですけれど、いろんな本を読んだり、クイズにかかわらない問題を解いたりするのも楽しいですね」

◇   ◇   ◇

 日高さんの言葉を聞いていると、学び続けることの愉しさや、知的向上心を持ち続ける大事さを感じ、前向きになれます。クイズをきっかけに、みなさんも興味のある分野について、さらに学んでみてください。

(取材・文/池守りぜね)


【PROFILE】
日高大介(ひだか・だいすけ) ◎宮崎県生まれ、浜松市育ち。14歳から本格的にクイズを始め、高校在学中に『第14回全国高等学校クイズ選手権』で静岡県代表、大学在学中には『パネルクイズ・アタック25』『タイムショック21』優勝、『クイズ王最強決定戦』準優勝2回など。2006年にはクイズ作家活動を本格的に始動、『クイズ!ヘキサゴンⅡ』『全国一斉日本人テスト』『百識王』などにかかわる。2010年からは『お願い!ランキング』『笑っていいとも!』『行列のできる法律相談所』などのメディア出演を重ね、クイズ王/クイズ作家として500本以上のテレビやラジオに出演。現在は主に『クイズプレゼンバラエティー Qさま!!』『超逆境クイズバトル!! 99人の壁』などのクイズ番組やクイズ特番などに携わる。

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