芸能界入りした長女・水嶋凛には「よかったね」
──21歳ですごく大きな体験をしたんですね。
「はい。その後の役者人生に大きな影響を及ぼしましたね。それはある意味、残酷な学習でもあったし、でもそれが現実でした。具体的なことを言うならば、どんなに必死になってもコゼットという役は、どちらかというと劇評としての評論には結びつかない役なんですよね。人間の機微や人生の悲哀みたいなものを表現する役ではなく、可愛くてきれいでピュアを象徴するようなキャラクターで。
だから3か月の間にすごく葛藤して。でも、そういう自分の役割をカンパニーの一員として担うという客観性というものも必要なんだということをすごく感じて。その中から、俳優っていうのは自分が自分がではなくて、チームの中での自分の存在をちゃんと認識する賢さが絶対必要なんだということは感じましたね」
──それを若いときに学んだことはよかったですか?
「そうですね。なぜなら、そのころの私はすべての仕事で主役しかやっていなかったから。デビューしてからずっと主役というのが当然の日々だったから、変に勘違いした傲慢(ごうまん)さとかをいいタイミングで打ち砕かれたのはあったと思います」
──ひとりの女性としては、結婚して3人のお子様の母親でもありますが、子育てとお仕事の両立で苦労したことはありましたか?
「下ふたりは年子だったので、小さいころは仕事をセーブしていましたけど、実家が近いことが大きかったです。助けが必要なときには、両親が来て子どもたちを預かってくれて。本当に感謝していますね」
──子育てをしたことで、得るものはありましたか?
「う~ん、そういうことを聞かれると、いつも微妙な気持ちになるんですけど、産まない選択をした人、産めなかった人、いろいろな人がいるじゃないですか。だからいつも言うときに言いよどんじゃう部分があるんですけど。
ただ、それを全部取っ払って、本当にただ産んだ人間として言うならば、やっぱり生まれた意味があったなって。それぐらいの経験ではあったなと思います。たぐいまれな素晴らしい経験をしたなって。それは断言できる」
──長女の水嶋凛さんが、2021年に女優デビューされました。女優になりたいと言われたときはどう思いましたか?
「ああ、やりたいんだ。へ~って感じでした。美大でメディア芸術を専攻して映像の分野を学んでいて、そういう系統に進むのかなと思っていたので。それがいざ卒業ってなったら、ちょっとやってみようかなって言いだして、少し驚きましたけど。
でも私は、本人が『これやりたい!』って道を見つけてくれることだけしか希望していないので、やりたいものを見つけたんだったら、よかったねって」
──後輩の女優としては、どのように見ていますか?
「う~ん、舞台(ミュージカル『シンデレラストーリー』に主演)に立つ彼女を見ていて、あんまり客観的に観られませんでしたね。やっぱり、“この子、女優としてああだな、こうだな”っていうことよりも、ただ胸がいっぱいで。ああ~人生って不思議なことがあるな~って。でも今、ケンカ中なんですけどね。全然口を聞かない状態ですけど(笑)」